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岳沢アイス

日程: 2022年1月30日(日)
山域: 岳沢(仙丈ヶ岳三峰川流域)
参加者: 江戸・他1名
行程:
杉島駐車場(前夜23:10) – 杉島ゲート(23:15) – 丸山谷出合(0:00) – 北沢南沢分岐(0:30) – 営林小屋跡 – 岳沢越(4:30) – 岳沢出合(5:10) – F1(7:15) – F3(7:45) – F4(8:50) – F5(10:10) – F6(10:20) – )F7(10:30) – F8ソーメン流し – F9(14:20) – 大仙丈ヶ岳(16:50) – 仙丈ヶ岳(17:30) – 柏木登山口(翌0:10) – 杉島駐車場(1:20)

今回のパートナーに岳沢山行の話を持ち掛けられた時は、すぐに返答することができなかった。ワンデイを視野に入れた速攻登山という条件が付いていた為だ。
廣川健太郎氏の新版アイスクライミング(以後トポ)やその他の記録を参照すると、スタートの杉島ゲートから仙丈ヶ岳までで大体14時間の行程らしく、更に地蔵尾根の下りで+数時間は掛かる。2泊3日程度の行程であれば岳沢は体力的にも技術的にも手頃な課題かなと考えていたが、長時間行動が前提となると経験がなく、決断が鈍った。せめて、技術的核心で足を引っ張らぬようアイスのIV+リードやV-フォローで絶対に落ちない自信が付かない限りは断ろうと思っていた。
が、事前のトレーニング山行で踏ん切りが付き、パートナーにOKと返答。大変な山行になることは分かっていたが、自分の力を試す機会を前にやや興奮しながら当日を迎えた。

山行前日の17時過ぎにパートナーのI氏と新宿にて合流後、伊那まで5時間弱のドライブ。三峰川林道の杉島ゲート手前の駐車場に着いたのが22時前で、30分程度の仮眠と荷物のパッキングの後、23時過ぎに行動開始した。
林道はわずかな積雪と所々に凍った水溜りがあるのみだった。丸山谷の分岐から南沢に進むと林道が途切れて雪道になるが、今回は一週間前に入ったと思われるパーティのトレースが残っていた。この時点で積雪は膝下-膝くらい。少なくとも一週間以上は降雪がない。幾度かの渡渉や堰堤超えを経て、1400m付近の分岐で左俣へ。しばらく進むと滝に当たるため右岸側から高巻きするが、ここは傾斜が有るうえガレているため慎重に登る。巻いてからしばらくすると営林小屋跡に到着。
小休止の後、岳沢越まで沢筋をひたすら登っていくが、やがて傾斜が付いてくるとガレて悪くなるので左岸側の藪に入る。ちょっとした急登を経て4時半頃に岳沢越に到着。東側に斜面を下り、三峰川本流に突き当たったら沢沿いにやや南下すると岳沢出合に到着。時間は5時を過ぎたが、まだ真っ暗だった。スタートからの所要時間は6時間で、大方予定通り。
小休止の後、岳沢に入りF1を目指す。トレースは沢に入ると殆ど消えており、ここからはラッセルになる。雪の深さは膝程度だったが、表面がクラストしたモナカ状のため非常に歩きにくく、また時折吹き溜まりで腰までハマることもあり体力と時間を奪われた。F1に到着した頃には7時を過ぎており、周囲はとっくに明るくなっていた。日が登ることで寒さは和らぎ楽になったが、この頃から眠気を感じるようになる。とはいえ仮眠を取る時間の猶予もないので先へ進む。
遅くとも14時頃にはF8ソーメン流しを通過し、日暮れ前には仙丈ヶ岳を超え地蔵尾根に入りたかった。間に合いそうになければビバーク場所を探すか、途中で引き返すことも視野に入れなければならない。

F1は傾斜の緩い6-7m程度の氷瀑。釜は完全に雪で埋まっていた。ここはフリーで通過し、左へ進路を取ると遠くの側壁に30-40mはあろうかという見事な大氷柱が掛かっているのが見えた。氷柱は下部までしっかり凍り付いており、V+以上はありそうだった。
F2は大氷柱の右脇にあると思われたが殆ど埋まっておりよく分からなかった。すぐ先にF3が見える。


F3はやや傾斜があり扇状に広がる30mの氷瀑。氷瀑の左寄りは立っており氷柱状の部分もあるなど少し悪く、右に寄る程傾斜が緩く登りやすそうに思えた。右端部から左上すれば楽に抜けられそうに見えたのでフリーで取り付いたが、これは失敗で、落ちることのできない高さでガレた草付きの登攀やナメ滝でのトラバースをするハメに。ここは慎重にロープを出すべきだった。F3最後のナメ部分を通過すると、直後にF4。


F4は序盤が垂直に近い15m程度の氷瀑(IV+程度)。ここでロープを出し、パートナーがリードで先行する。本人のコンディションはあまり良くなさそうだったが、凹角を突きながら危なげなく上まで抜けていった。自分もフォローで登ってみると、思ったより氷が硬くやや苦労させられた。
F5はF4の先で見える筈だったが、雪に埋もれていた。先の分岐の右俣にF6。


F6は傾斜の緩い10m程の氷瀑になっており、その他大部分は埋まっていた。フリーでさっさと抜ける。


F7は傾斜の緩い20m程度の氷瀑で、左から巻くことができた。氷の合間から水を汲み、小休止を取る。ここで水分補給できたのはとても有り難かった(この山行での最後の給水ポイントになった)。F7を通過すると、すぐ左側に見事なソーメン流しの滝が見えた。この時点で11時。ここから3時間でF9まで抜けられれば、ラッセルの調子次第では当日中の下山も十分可能と思われた。


F8は全長80 – 100m程度の氷瀑。下部は緩傾斜で所々が立っている程度で簡単そうだが、上部30mはほぼ垂直になっていた。ここは有り難くもリードを譲って貰う。この時には高揚感で眠気など忘れてしまっていた。
垂直部の手前まで進んでピッチを切り、パートナーを引き上げた後、核心へ挑む。一度右側のテラスに向かった方が楽そうには見えたが、なるべく垂直部を楽しみたかったので直上へ進む。氷は立っているものの、やや段状になっており足の置き場は豊富で、ピックさえ決まればレストは容易だった。上部では氷が薄く脆くなり、ランナーも取りにくくやや気持ち悪かったが何とか突破。最後に乗っ越し、しばらく(60mロープが心許なくなる程度に)歩いた先の灌木で支点を作り、パートナーが上がってくるのを待つ。技術的な難所は終わったのでかなり気が楽になった。


F9は緩傾斜の10m程度の氷瀑。ここはフリーで抜け、ロープをザックに戻した。この時点で14時半。仙丈ヶ岳までの標高差は500m程度。日暮れまで時間の余裕は無いが、ラッセルが絶望的という様子でもないので予定通り大仙丈ヶ岳目指して進む。

F9からしばらく進み、ルンゼ状の地形を抜けて多少開けた辺りで分岐を左俣に進む。傾斜があり表面はクラストしてるうえ吹き溜まりも多いため辛いラッセルになるが、パートナーと時折交代しつつ辛抱強くペースを維持。しばらく小沢を詰めた後、向かって右の尾根に入る。後は大仙丈ヶ岳の西稜に乗るまでひたすら登るのみ。やがて大仙丈ヶ岳のピークが視界に入りやや気が逸るが、高度と疲労の為に心拍数を上げきれず、思いとは裏腹に遅々としたペースで確実に標高を稼いでいった。


大仙丈ヶ岳に到着したのは17時前で、既に日が傾いていた。更に先へ進み、仙丈ヶ岳に着いたのは17時半。日は暮れかかっていたが、山頂からは下界へ伸びる地蔵尾根とそこへ続くトレースが確認できた。後はひたすら降りるだけ…。
下山時は寝不足や疲労、寒さが合わさりとにかく苦しかった。地蔵尾根では何度となく登り返す場面があり、精神的に消耗した。途中、私は水分不足気味になっており、パートナーのジェットボイルで沸かしたお湯がとても身体に染みた。
柏木登山口に到着する頃には日を跨いでいた。更に杉島ゲートの駐車場まで1時間掛けて歩き抜き、山行は無事終了。行動時間は26時間にもなった。達成感は大きかったが、とにかく疲れた。

山行の所感

・体力的には自身の限界に近い山行だった。行動食は計4000kcal分と普段より多めに持っていったがこれでも十分とはいえなかった。水分補給の方が疎かになってしまったのは失敗(摂取量は3L弱くらい?)。

・アイスの核心部分はトポ通りのIV+くらいだったと思うが、10kg程度の装備で臨んだからこその体感であり、連泊装備で挑んでいたら今回ほど楽に登攀することはできなかった筈。40km弱の水平移動と累計で2500m以上の登りを消化しきれたことも含め、軽量化による登攀難度や機動力への影響の大きさを身をもって知った。

・今回の山行は、基礎体力と登攀技量の錬成や達成感の獲得のみに留まらず、長時間行動に臨んだ際の自身の身体や精神の挙動への理解を深め、また装備の選択や軽量化に対する考え方を変える契機となった。多くの気付きを得る切っ掛けを与えてくれたI君に感謝です。

(記: 江戸)

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