足拍子岳山稜

  • 日時: 2006年2月4日(土)~2006年2月5日(日)
  • 山域: 足拍子岳山稜(柄沢山~荒沢山~足拍子岳)
  • 形態: 登山
  • 行程: 湯沢中里スキー場~柄沢山~無名峰手前ピーク~無名峰(1148m)~無名峰手前ピーク~柄沢山~湯沢中里スキー場
  • 登攀具: ロープ9mm x 50m x 1・わかん・ハーネス・カラビナ数枚・シュリンゲ数枚
  • 参加者: 坂田(L)・国府谷・後藤・志村・清水(幸)

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鋸岳と天秤に掛けながらも、新人女性達にも雪山を堪能してもらえること、国府谷さんがたまにはラッセルしたいという希望もあり、柄沢山から足拍子岳山稜をたどることとなった。
今シーズンの上越はまれに見る大雪に見舞われており、敢えて冬の記録が少ないマイナーな山域を選ぶことに意義があるだろうし、荒沢山~足拍子岳東面は興味深いバリエーションルートがあり、今後のためにも山域把握に有効だろうという気持ちも働いた。
結果的には荒沢山手前の無名峰までとなったが、十分な成果を得られた。
志村さん・幸さんにはハード過ぎたかもしれないが、非常な頑張りを見せてくれたことが頼もしかった。
これといった岩稜がある訳でもなく、ただひたすらのラッセルと雪屁を意識したライン工作に終始し、変化に乏しい。
それでも時々はロープが必要であったし、ルートファインディング能力を試されることから、厳冬期にこのような山を登る面白さを発見でき、満足出来た。テープも取り付き近くに2ヶ所のみでほとんど人が入らず静かだ(高速道路は近いが…)。
地形図を眺めて想像するよりも登りごたえたっぷりで、トレーニングとしてもお勧めである。

2月3日(金)

23:20 新宿駅発

当初は22:30の予定であったが、会報の発送作業や出張などで坂田・後藤が遅れる。国府谷車にて出発!水上を過ぎるとかなりの降雪で取り付けるかどうか心配になる。こーやさんは経験のない雪に興奮気味(かも)。予報では土日共に雪で荒れ模様とのこと。

2月4日(土)

2:30頃 岩原スキー場着

取り付きは湯沢中里スキー場だが、無料仮眠施設を利用すべく岩原へ。スペースが広く、畳張りで快適に寝られる。軽く前夜祭をして3時過ぎに就寝。到着した時は空いていたが、目が覚めた5:00頃には人で埋め尽くされていた。

06:30 起床

眠い。取り付きがスキー場だとだれてしまう。外を見ると雪はかなり小降り。気を良くして起き上がる。もう7時近い。こーやさんも相変わらずな目覚め。祐介なんかはネボスケのイメージがあるけど意外に寝起きがいいんだよなぁ。

08:35 湯沢中里スキー場第1高速リスト

リフト一番乗り。降りて右手を眺めると顕著な尾根。取り付きに迷うことがないのは嬉しい。早速のラッセルを予想し、わかんを付ける。マイわかんを初使用。こーやさんもわかんを使った本格的な山行は初めてらしい。志村さん・幸さんのわかんは清水さん・塩足さんから新品のスノーシューと共にお借りた。スノーシューではナイフリッジを歩きにくいだろうとわかんにしたが、クラストした急斜もあってこちらで正解だった。順番は坂田・後藤・清水・志村・国府谷。

09:05 取り付き開始

しばらくはクラストした斜面でわかん要らずであった。今週半ばの雨によるものだろう。しかし、すぐに行く手を急な雪壁が現れ、ラッセルで乗り越えるのは辛いので巻き気味に登る。こちらはところどころクラストしているのはありがたいが、わかんが邪魔。滑ったらやばいので慎重に登る。志村さん・幸さんには大変かと思ったが、無事にクリアー。この日の核心となった。

10:10-10:25 1本

ひたすら尾根をラッセル。西側は切れ落ちていて、雪屁が発達していて神経を使う。木から離れないように歩くが、木の枝にザックがつかえるわ踏み抜き多いわで気が滅入りそうだが、普段のバリエーションとはまた違った感覚で面白かった。昨シーズンの俺なら速攻こーやさんにトップを交代していただろう。昨シーズンの記録を読み返すと祐介には読ませたくない程の軟弱さなのだ。夏は変哲もない尾根だろうが、雪がついて波打って変化に富んでおり、ちょっとした急登のラッセルを繰り返す。ほとんどは乗り越えられるが、見ただけでうんざりする時は東側斜面をトラバース。時折風雪が強くなり、視界が落ちる。こういう時は雪面と空が溶け込んでしまう。それでも覚悟していたほどの吹雪ではなくて良かった。今朝は-9度だった気温も上昇し、今は-3度と暖かい。アウターの下は汗だく。

11:00 柄沢山

一緒の冬山は初めてで、ちょっと心配だった志村さん・幸さんのペースは予想以上に素晴らしい。ただあっけなく着くと思っていた柄沢山までにこれほど労力を費やすとは。今日中に荒沢山は無理かも。ただ、ここからは傾斜の少ない稜線歩きかと思うと気が楽だ。ただ雪が増えて来たのは有難くない。平均膝上で頻繁に腰までもぐってしまう。

11:35 – 11:45 1本

こーやさんがラッセルしたくてうずうずしているようだったので、渋々(嘘)交代する。最後を歩くがやっぱり楽。前を歩く志村さんはわかんが外れて壷足。時々踏み抜いて辛そう。わかんにも飽きてきたことやし、という訳で壷足で先を歩くことにする。わかんのありがたさを実感しつつも、取り回しの利く壷足もよし。ラッセルがうまいと女の子にもてる(はず)ので、こーやさんのテクニックを盗みたかったが、ちょっと遠目過ぎた。ただがむしゃらなだけの俺よりも丁寧なようだったが…?

12:40 – 12:55 1本

再度ラッセル交代。

14:00 無名峰?

ようやく無名峰。というのは思い込みであって実際はその手前のニセピークであった。もういい時間だしそこそこ広い尾根になったのでテントを張ることにする。今回は4~5人用エスパース1張。冬山としては冒険的な選択だったが、ダメだったらツエルトで寝ればいいやと思って。いざとなるとそれも億劫になり、何が何でも詰め込んでやると決める。夕食は正月山行の予備食だったカレーライス。唐辛子が利いた辛口。祐介は山行中に辛を得ることへの研究に余念がないようだ。激辛ばかうけなるものまで登場。こーやさんの麦焼酎・幸さんの日本酒がうまくて満足。日本酒は半升もあり、幸さんの体力は大したもの。志村さんのビールワイン(30%)は変わった風味。こーやさんがおつまみをたっぷり差し入れてくれた。19時を回り、いざ寝ようとするとテントの中がごった返してすごい騒動だ。半身になって寝るしかないと思っていたが、実際は寝返りが打てないだけで普通に寝られる。いいテントだ。ただ湿雪と高温で全てが濡れてしまっているが、これは仕方がない。

2月5日(日)

4:30 起床

祐介の声で眠りから覚める。長い夜だと思ったのにあっという間だ。昨夜にこーやさんが外へ出た時には星空だったらしいが、一晩で少なくとも50cmの積み増し。風で時々テントがはためくが大したことはない。朝食は志村さんに準備をしてもらった袋めん(そば)・餅・チャーシュー・ねぎ。そばはラーメンよりも薄くてかさばらないことを初めて知った。さっぱりと食べ易くて良い。

7:05 出発

不要なものはデポ。出だしはゆるい下りでラッセルも軽快だがそれも束の間、しんどい登り。ただ上越のこの標高にしては雪が軽い。但し、木の側を歩くのでボコボコ足が(時には体が)はまるのは心臓に悪い。天気は昨日と変わり映えなく、ルート上も特筆するようなところはなし。

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8:20頃、急斜をトラバースする。尾根上の木を目指したが、近くまで来たところで嫌な予感がして雪を取り除いてみるともう1歩先に足場はなかった。木は反対斜面から生えていたものだった。やばいやばい。急だが、斜面のもっと下を切るしかないようだ。ビビッたのでロープを出す。雪が盛り上がった斜面はハングしているような感覚で蹴り込みにくく、丁寧に雪を落としながら慎重に足場を作る。出来上がったルートを振り返ると特に難しくもないものに変わっていたが、FIXを張る。

09:07 無名峰

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荒沢山だと思ったらここが無名峰だった。ガッカリ。目前にうっすら見える荒沢山は何倍もでかい。1500mにも満たない裏山がこんなにでかかったとは…!ちょっと舐めてたかも。12時には温泉に入る予定なのでこれ以降は諦めて下山。新雪の下りは気持ち良く、ロープを出したところもあったが、あっという間にテン場。あの苦労は何だったのか?

10:11 テント場着

撤収してさっさと下山。何事もなく…と書きたいところだが、今回の反省はここから。

11:30頃 1度目の分岐ミスに気付く

下り始めは順調で最初の分岐の判断も良かった。柄沢山と無名峰の間の顕著な分岐点で尾根を間違い、気付かず相当下ってしまう。2/3はこーやさんにラッセルしてもらったのだが無駄になる。斜面が谷へ向かって一気に落ち込んでいること、隣にそれらしい尾根が走っているのが見えて気付き、逆順で(祐介トップ)で登り返す。ここで1時間程度のロス。視界が悪いと判断が難しい。登るときに赤布のような目印を付けることも必要だろう。近くに見えた隣の尾根が意外に遠い。途中、幸さんが水を飲みたいとのことだったが、分岐点まで粘る(長かったかな?)。分岐点のところで、祐介に「1本取ろう」と声を掛け、じゃそこでということで下り始める。

12:20 雪屁踏み抜き

が、数十メートル下ったところの凹みで志村さんの静かな「あっ」という声と共に姿を消す。いつもの踏み抜きかと笑い事に思っていたが、声もしないし雪屁に近いことに気付いてこーやさんと慌てて下る。わずかな下りの時間に色んなことが頭を駆け巡ったが、セルフビレーを取って無事を確認。怪我もなく、大して落ちてないようだ。マジでほっとした。基本的に雪屁はハングしているので上部15m程度の登りがしんどそう。それにロープが雪に食い込んで重い。あらかじめの荷物引き上げだけでも抵抗が大きくすぐには上げられなかった。ただスコップ1本をかませるだけでも大きな効果があった。支点がピッケルなのでロープをアッセンドするのは勧められず(実際には試みたが結局はテープ凍結でプルージックがうまく機能しなかったようだ)で、最終的にはロープマン+人間アンカーで引き上げながら自力で登ってもらった。
雪屁の踏み抜きは突然やってくるので本人の衝撃の大きさは計り知れないが、良く頑張ってくれた。無傷であったことは何ものにも替え難い結果だ。致命的でない失敗は後々の糧になる貴重な経験だが、あんま心配させやんといてな。祐介が気持ち良く下ってくれたお陰で志村さんとの間隔が開いたことも幸いだ。リーダーとしての教訓は、せめて2番手について近くに居てやれば良かったということだ。

14:32 2度目の分岐ミス

再び、何事もなかったかのようにラッセルが続くが、遠目にフラットな尾根も雪面は凸凹で昨日の登りと大差なく疲れる。息切れを起こしたところで木もない真っ白な斜面が視界を覆ったところで降参して1本。疲れをこーやさんに見透かされたのかラッセルを交代してくれた。歩き出したところでガスが取れて視界が広がり、祐介がスキー場のリフトを見付け、またもや尾根を間違えたことを知る。こーやさんのラッセルはまたもや無駄に。ジンクスとは言わないけどちょっと面白い。こーやさんが愛される理由はココにもアリ?

正しい尾根は急斜で、登りは巻いたところだ。クラストしてるのでロープを出す。4人はロワーダウンで降り、こーやさんは懸垂。斜面を引っ掻きながらずるずる滑落。祐介とこーやさんは穴ぼこに落ちてその様子がおかしい。やたらに時間が掛かったが、それぞれに楽しめて良かった。

16:15 スキーセンター着

後はスキー場まで一直線!最後まで踏む抜きには閉口しつつ…。リフトは下りに使わせてもらえず、スカイラインコースをより不整地っぽく仕上げつつ降りる。かったるい。12時温泉のはずが、結局はみっちり行動してしまった。その分久々に疲労感を味わう充実した山行となった。

さて、3月は穂高を登るつもりだ。当面目標へ向けてさらにステップアップすることにしよう。鋸・赤岳東稜。冬は短い!

(記: 坂田)

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