霞沢岳

日 時:2006年8月9日()~10日()

参加者:平野喜一、友清昇太、平野健太郎、

報告者:平野喜一

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上高地温泉ホテルから見上げる霞沢岳の稜線は鋭く尖った特徴のある岩尾根で、訪れるたびに機会があれば是非歩いてみたいと思っていた。

友清おっさんとは20年来の山友達で、国内のアルパインクライミングを一緒に楽しむ仲間である。

20代の若い時から愛称は‘おっさん’40代後半になりようやく年齢が追いついた感があるが、実に年季の入った板についた呼び名だと思う。

いつものごとくおっさんから‘どっか行かんとね’とのお誘いがあり、‘歳も歳だしあんまりきつかところはいかんばい’と言う感じで今回思いついたのが北アルプスの中では訪れる人も少なく、以前から気になる存在で、静かな山行きが楽しめそうな霞沢岳であった。

12日()からは坂田リーダー率いる錫杖岳クライミングへの参加を予定しており、そのまま次の山行きに合流できるエリアである事も非常に好都合な山である。

今回の山行きのコンセプトは島々谷から徳本峠を経由し星と温泉で存分に酒を楽しむ事。

残念ながら二股の橋に崩落の危険があるとの情報で、島々谷から趣のある岩魚止め小屋の経由を諦め、明神から徳本峠入る事にした。

8日間を確保した今年の夏季休暇に、家族を残し自分だけ山行きを楽しむにもどこか後ろめたさもあり、山に興味を示す中1の長男健太郎を誘う。

8日()新宿発夜行バスにて一路松本へ向かい、友清おっさんの待つバスターミナル横のホテルに宿泊し、健太郎の監視付きではあるものの約半振りの再会を祝し、友清おっさんと二人でビールとウイスキーで乾杯。

星と温泉はこれからだが酒の方は早くも山談義がスタートし、遅い時間に眠りにつき窓から差し込む朝の日差しでようやく目が覚めた。

9日()松本バスターミナルより上高地入り、前日は台風の影響でかなりの雨が降ったようだが、台風一過で実に素晴らしい天気。やはり台風の心配もあったのか、観光で来ている人も少なく河童橋付近もいつもの賑わいをあまり感じない。

明神を過ぎ峠道に入るとそれまで散策等で行き交っていた人達も急にいなくなり、日帰りで徳本峠を往復する軽装の何人かの人とすれ違うのみで、昔の面影を感じる静かな散策を楽しむ事が出来た。

最後の水場からおよそ30分で徳本峠に到着する。峠は思った程視界が開けてなく、テント場横に掛けてあるユニークな看板に従い‘45歩進む’と明神岳から穂高連峰の全容が現れる。

今夜の泊まりとなる峠には単独行のテント1張り以外、小屋にはお客さん1名しかいなく、狙い通りに星を眺める静かな泊まりのはずだったが、次から次へと襲ってくる蚊が多い事には大変悩まされた。

10日()早朝は薄暗い星空の元、3時起床で5時には霞沢岳往復に向け出発する。

テント張りで単独の人は霞沢岳往復後に大滝山まで足を伸ばすらしく、まだ暗いうちから早立ちして行った。

登山道は良く整備されており迷う所もなく、部分崩落はあるがさほど危険箇所も多くない。

縦走路でカモシカを見かける位だから普段から登山者は少ないのだろう。

問題なのは相変わらず迫ってくる蚊の襲来並びに直射日光による強い日差しだ。

樹林帯に差し込む日影を見入る間は良いが、高度を上げて行くと日差しを遮るものも少なくなる。

荷揚げの水も各自1.5リッターを割り込んでいる為、昨年熱中症により山の先輩を1名亡くしているので、友清おっさんは体の具合をかなり心配しているようだ。

健太郎は昨年一昨年と奥穂高・槍ヶ岳に登っており、天候に問題が無ければ大丈夫と考えていたが、良すぎる天気に親としては熱中症が気がかりである。日差しなど全然気にせず元気に歩く姿はまだまだ子供だが、年々その成長に頼もしさを感じる。

追い越されるのは後何年先の事かなと、嬉しい反面まだまだ自分の方が強いと想いつつアルコールの残骸が混じった汗をかきながら先を進む。

徳本峠から5時間近くを費やし360度の展望を楽しめる霞沢岳の山頂から越えて来た稜線を振り返ると、それまで印象深かった例の鋭く尖った岩尾根は六百山の一部である事が判明した。

山頂からの景観を十分満喫して徳本峠へ向かうが、登って来るのは学生9人パーティーの他単独の3名のみでやはり人は少ない。ジャンクションピーク手前で水も無くなり、休憩や写真撮りなど結局往復で9時間を費やした。

徳本峠からそのまま明神へ下り、上高地の小梨平キャンプ場には午後6時に到着し13時間の行程を終える。

キャンプ場の風呂で汗を流した後は、最初のコンセプト通りビールと焼酎で存分に酒を楽しんだが、木と回りの明かりであまり星は見ないまま深い眠りにつき霞沢岳を終えた。

北アルプスの中では登る人も少なく静かな山で、昔ながらの山小屋の雰囲気を十分味わえる実に落ち着いた感じの山であった。

11日()晴天に恵まれにぎやかなキャンプ生活を十分満喫し、平湯温泉へ移動。

12日()朝、友清おっさんに健太郎を預けて分かれた後、坂田パーティーと合流し錫杖岳クライミングへ向かう。

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