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2006.06.09

屋久島日記

2006年5月、私は牧田さんと屋久島を旅した。その強烈な思い出について書きたい。
行程記録は下記に留め、本文を随筆形式で追記していく形を取りたい。
客観的な記録が最小限になる事をお許しください。
2006年6月 後藤

目次
島へ、いかにしてたどり着くか

そして歩き出した

木に囲まれた夜

白谷雲水峡突破

おっちゃん走れ!

屋久の水

事故
(以下継続予定)

行程記録
4/28
羽田空港→(JAL)→鹿児島空港→(高速バス)→鹿児島東港→(鹿児島商船 ジェットフォイル)→宮之浦→ヤクデン→楠川→白谷雲水峡→野営
4/29
白谷雲水峡→白谷山荘→辻峠→トロッコ道→ウィルソン株→縄文杉→野営
5/1
縄文杉→高塚小屋→新高塚小屋→宮之浦岳→花之江河→淀川小屋
5/2
淀川小屋→ヤクスギランド→〔タクシー〕→安房→〔レンタカー〕→尾之間温泉→・・・→安房→やしま
5/3
安房→・・・島の名所・・・→安房→宮之浦
5/4
宮之浦→宮之浦港→(鹿児島商船 ジェットフォイル)→鹿児島港→鹿児島市内→(高速バス)→鹿児島空港→(JAL)→羽田空港

メンバー
牧田(リーダー・食料)、後藤(荷物)

足跡

Photo

コメント

事故

ウィルソン株には予想通り沢山のツアー客がいた。大学生らしきグループや、中高年の団体が多い。みんな荒川登山口から来た人達だろう。多くはガイドに連れられている。

まずは神様に御参り。

ウィルソン株の手前辺りから、ガイドらしきの人達が緊迫して無線連絡を取っていた。ツアー客もウィルソン株を動かず、空気が少し張り詰めているようだ。ガイドの言葉が緊張している。
休憩しながら牧田さんが何かあったらしい事に気づいた。近くのガイドの親爺さんに状況を聞く。

人がこの先で落ちた、ツアー客のようだ、状況は良くない、ヘリを呼んでいる、動かせるか分からない...

若いガイド達が緊迫してここで待機している。でも自分達に出来る事は何も無い事も、ぼんやり感じていた。
牧田さんが言った。ここに留まっていても仕方ない、行こう。

ウィルソン株から大王杉までは、何回か急な階段を登る事になる。何パーティかにすれ違って、3回目くらい急な登りで、一つのグループがあった。木道の脇に小父さんが倒れていて、口にマスクのようなものが掛かっている。ビニール製で内側に水滴が付着しているのが見えた。
隣で小母さんが、泣いている。

お父さん起きてよ!起きてってば!

一体自分達に何が出来ただろうか。まじまじと眺めていた訳ではない。ずっと下を向いて、通り過ぎた。でも何が起こったかは全て分かったし、一生忘れられないだろう。

ヘリの音は、僕らが縄文杉について暫く経った頃にやっと聞こえた。微かに、そして突如頭上から。鹿児島から飛んできたのだろう。民間ヘリのようだった。
その人はツアー客だったという。大きな団体だったが、ガイドの人数が少なく、パーティをとても見きれない状態だったようだ。彼らが来た荒川登山口からのコースは歩きやすいが、とにかく距離が長い。ガイドも時間を急ぐあまり、速いペースで引っ張っていたようだという。ペースが遅れ、先頭が休憩を終える頃に、追いつく人が出ていたようだと別のガイドが言っていたが、ガイドが悪い訳ではないだろう。一人の人間に20名以上の安全を約束させるのは公正ではない。いいところ5名から、本当に過酷な状況なら0名。
ガイドがもう少しああしたら。その人がもう少しこうだったら。という思いばかり湧いて来る。もしかしてもう少し涼しかったらその人もバテなかったかも知れない。そんな悪条件が重なって、その人は縄文杉からの帰りに足を滑らせたのだ。

この文章を書きながら、21:00頃同じルートで遭難が起きた事を知った。遅れた一人が来ないのだという。その人が無事かどうかはまだ分からない。

多くの人が訪れるようになった屋久島。でも自然が人に優しくなった訳では決して無いと、今改めて知る。

屋久の水

小杉谷側に山を下ると、トロッコ道に出る。荒川登山口からの登山客はとっくにウィルソン株辺りまで行ってしまったのだろう。人通りの少ない道を上流に向かう。
大株歩道入口には沢山の登山客が休憩していた。まるで高尾山に登ったような込み具合だが、人込みに愚痴を言っても仕方あるまい。自分も人込みの一部なのだし、それほどすばらしい所って事だ。それにしても軽装の人が多いのが気に掛かる。デイパックだけだったり、運動靴だったり。周りの軽装ぶりから浮き立つバカでっかい2つのザック。
大株歩道はほとんど木道になっていて歩くには何も問題ないが、樹林帯の登りに大きな荷物は疲れるものだ。道沿いの清流で休息を取る。木の下に湧出口があるようで、湧水で喉を潤す事が出来た。水はほのかに甘かった。
この島の川は恐ろしく澄んでいる。だが、そこには魚はあまり棲まないという。花崗岩質の砂礫層が雨水をすぐに透過させてしまうので、ミネラル分や有機物があまり含まれないのだ。眺めている僕らにとっては、屋久の沢は美しい。でも水に棲む連中には過酷な環境。そして、沢に足を踏み入れた者全てに島が過酷な課題を要求する事を僕らは知っている。自分のレベルではしばらく太刀打ち出来そうに無い。

おっちゃん走れ!

小一時間歩くと白谷小屋に着く。ここまでハイキングで上がってくる人も多く、軽装の人が多い。少し早いがお茶の時間にする。こんなにのんびりしてていいのかな。いいのだ、東京にいる訳じゃないんだから。
ここは白谷小屋、おれが去年の正月を迎えたところだ。そのときは一人でチキンラーメンを喰っていてうちの会の九州支部の人に拾われたんだっけ。それでこの会に顔を出したんだから、めぐり合わせってやつはほんとに分からないものだ。

おれたちの荷物を見ておっちゃんが声をかけてくる。

でっけぇ荷物だなっ。どこまで行くんだ?おれにももたせてみろ、あぁまだ軽ぃよっ。30キロも無いだろ、25キロ位か?おれも若い頃はもっとしょったんだ。
 まぁ、昨日は白菜も入ってたし・・・

先に出発したが、辻峠を越えて辻の岩屋辺りでおっちゃんに追い抜かれる。なんとこんなところで走っているではないか。と、思うとその先で立ち止まっている。太鼓岩に行くつもりで奥さんを残して走っていたという。太鼓岩はさっき通り過ぎた辻峠から下りないで分岐していく道を行くんですよと教えると、駆け上っていってしまった…
昨日が50歳の誕生日だったとの事だ、元気があり過ぎる。

白谷雲水峡突破

6時頃起床、相棒は寝起きが悪いのでしばらくほっておく。外はすっかり日が出て明るい。沢筋に張っていた天幕は無くなっていた。きっと寝坊助共を尻目に先に行ってしまったのだろう。
相棒にいびきの音量についてブウブウ言われながら昨晩の鍋で朝飯を取る。おれは牧田さんのいびきの方がでかかったと思うんですがねぇ、ハハハ。
幕営地から50m程登るとすぐ車道に出た。ほんとは指定地以外は幕営禁止なのでおっかなびっくり。でも昨日は緊急事態でしたから、ハハハ。

少し歩いて白谷雲水峡の入口まで行くが、管理費を払うと知ってもったいなさに引き返す。なに、裏側から入ればいいんです。
自然の土地に柵を張って金を取るとはけしからんと言う不心得者二人。

雲水峡を抜けると随分人が減る。透き通るような初夏の緑。

木に囲まれた夜

19時頃、日が落ちて進めなくなった。白谷雲水峡の手前の沢沿いにて幕営することにした。
近くにもう一組のキャンパーがいた。沢筋の暗い林にタープを張っている。その辺りはじめじめして気が滅入りそうだったので、少し小高くて開けた場所にテントを張る。いくら雨が降っていなくても沢のすぐ近くにテントを張る気にはなれなかった。増水すればひとたまりも無い。
鹿児島で買った黒豚(もちろん生のパック)と白菜で鍋にする。
何というすばらしい夜であることか!
屋久杉の黒いシルエット、360度木に縁取られた星空、天の川、虫の音と静けさ、ろうそくの明かり、うまいめし、最高の仲間、500mlアサヒスーパードライ。

そして歩き出した

15時(頃)屋久島宮之浦港着。観光客の雑踏はあっという間にバスに吸い込まれ、そしておれたちは歩き出した。まず燃料を入手しなければならない。
港から県道に出て右手にあったホームセンター(ヤクデン)にてガソリンとガスカートリッジ、焼酎を入手。
楠川まで、国道沿いを歩く。7年前よりずいぶん都会になってしまったと牧田さんが言う。彼は島の人の温かい心を本当に愛している。彼が以前来たのは7年前、世界遺産登録直後だ。今は観光客が相当増えただろう、民宿の看板が目立つ。島の人の暮らしも相当変わったのではないか。島が豊かになるのは無条件にいいことだ。でも風景とともに島の温かさは変って欲しくない。
それにしても南国の日差しは強烈だ。2時間程で楠川に着く。日が傾いで来たが進めるところまで進んでおきたい。暗くなるまで歩く。

島へ、いかにしてたどり着くか

東京から屋久島へは、飛行機で羽田から鹿児島へと飛び、飛行機か船で島に入るのが一般的だ。
今回はジェットフォイルのトッピーを使ったので、鹿児島空港から鹿児島市内に入り、鹿児島東港のトッピー乗り場から乗船した。
旅は、朝、目覚めたところから始まる。この目覚めで何度後悔したことだろうか。昨日まで二人とも仕事に追われ、しかも片方は夜飲んでいた。
今回は・・・問題なし!6時にお互いの安否を確認する。
食料は船の時間待ちを利用して鹿児島市内で買い出す。デカ過ぎるザックを背負ってスーパーでおばちゃんを掻き分けるのは少々骨が折れる。今夜は鍋ですか?エッ黒豚のパック買ってくんですか?トッピーの時間が・・・
起きて、乗って、買い出して、また乗って・・・島への障壁は多い。

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