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2009年7月21日 (火)

小室川谷遡行

日程: 2009年7月19日(日) - 20日(月) 前夜発
山域: 小室川谷
参加者: 国府谷(L)・松林・中村・土井・有富
行程:
第1日目: のめこい湯(6:30) - 三条新橋・泉水谷林道駐車場(7:15) - 小室川谷下降点(7:48) - 小室川谷出合(7:52) - 2段8m(8:17) - 廊下(8:42) - 5m滝(9:07) - S字峡(9:27~9:47) - 松尾沢分けて連続小滝 - 5mトイ状の滝(10:17) - 小室の淵(11:05~11:30) - 5mトイ状の滝 - すだれ状2本滝(11:36) - 3m滝(11:52) - ナメ滝(12:04) - 15m雨乞ノ滝懸垂(12:40/13:24) - 4段ナメ滝(14:20) - F7・7m(14:34) - F7・8m(14:40) - 蛇抜け沢出合1385m(15:30)
第2日目: 蛇抜け沢出合出発(6:45)  - フルコンバ小屋窪(蛇抜け沢二俣の左俣)入渓 - 登山道(09:17大休止) - 大菩薩嶺 - 丸川峠 - 泉川谷林道 - 駐車場(13:30)

丹波に泉水谷あり、泉水谷に小室川谷あり――
昔から、賞賛されてきた沢らしく、夏に思う存分泳ぎ、かつ遊べる沢だという触れ込みだ。だが、過去の記録を調べると、滑落事故あり、ヘリ救出劇ありと、手強そう。心して臨んだのは言うまでもない。(敬称略)

7月18日

松林・中村・土井は調布駅にて21時集合。3時間後、丹波山村「のめこい湯」で、リーダーの国府谷・新会員の有富と落ち合い、駐車場にテント設営。前日まで雨だったため、駐車場は濡れていた。

7月19日

仮眠3時間は44歳の中年には辛い。だが、有富は元気いっぱい。さすが28歳だ。泉水谷林道を歩くこと約30分、小室川谷下降点に到着。10分もかからず小室川谷出合。鬱蒼とした緑のトンネルから、さらさらと水流が奔り出ている。小室川谷は、最初から雰囲気のある沢だった。

国府谷・有富・中村・松林・土井の順で遡行開始。すぐに2段8m滝となり、上段は右岸から登る。単調なゴーロをいくと、8m滝。左岸からスイスイと越えていく有富を見て、感心する。とにかくバランスが良い。だてにアフリカで鍛えていないな、と舌を巻く。

明るかった廊下は、やがて狭まり、淵をかかえた5m滝。ここは胸まで水に入り左岸をへつるしかない。この冷たさを求めてきたのだから、「いっちょ、やってやろうか」という気分になる。
で、水に入ったが、やはり冷さには勝てない…。ケチせずにネオプレーンの上着を買うべきだった。よし、来月は飲み会を減らして、浮いた小遣いで買うぞ。ジャブジャブと浸かりながら、胸に誓う。

しばらくすると、S字渓。ここも、深い釜の左側を腹まで水に入り、へつる。滝手前で壁に這い上がるのだが、このスリルがたまらない。この後、S字峡はミニゴルジュとなり、先頭4人は途中から右岸を巻く。天邪鬼の小生、水線通しにチャレンジするが出口の滝がかぶっていて敗退。ロスタイム10分、皆さんごめんなさい。

ゴルジュを越えると、松尾沢を右岸に分けた。次々と小滝を越えていくと、石門ノ滝。滝は諦めて、左の垂壁にぶらさがっているロープを頼りに、まず松林さんが突破。小生も続いたが、15mほどの垂壁は苔だらけで足の置き場が以外と難しい。ロープを信用して登ってしまったが、こうした安易な登り方をする人に限って事故に遭うもの。神罰だろうか、最後の一手のところで落石がヘルメット直撃。目眩がして、しばらく頭がグラグラしていた。
下から見て危惧したのだろう、残る3人は草付きを高巻いた。これが正解だと思う。

その後、核心の「小室の淵」が現れた。きれいな深緑の淵の奥にCS滝がかかっている。遡行図によると、手前から右岸を巻けるらしいが、今日は河童になる覚悟なので突入だ。
まず、リーダー国府谷が泳いで偵察。「淵の下にフットホールドないし、這い上がれないよ」という。見渡したところ、両岸は垂直に切り立っているし、垂壁上部の草付きも傾斜が強く、相当悪い高巻きになりそうな予感がする。
淵を突破する自信なんて、これっぽっちもない。だけど、草付きは、もっといやだ。つい、「僕がやってみます」と口走ってしまった。
淵を10mほど泳ぐが、冷たいのなんのって。滝の手前から這い上がろうとしたが、やはりスタンスもホールドもなかった。
いつもなら簡単に諦めてしまうのだが、この日は強気だった。CS滝から少し戻って、必死に立ち泳ぎで粘る。「しまった。空身で泳ぐべきだった」と後悔したが、おめおめと皆の所に戻るのもかっこ悪い。
水の中から観察すると、壁に溝が走っているので、チャレンジ。スタンスはないけれど、小さなホールドを拾っていける。そして、気がついたら水から上がれた。万歳!
溝の中から右へソロリソロリと細かくへつると、そこはCS滝の脇の岩場。シュリンゲ2本を結んで、泳いでくる4人にお助け紐を出す。淵から上がると4m滝だが、これは右岸のルンゼから巻き、おしまい。
「ヘタレ」の小生にとって、小室の淵は難関でした、本当に。敢えてトップを任せてくれた皆さんに感謝。

さて、淵の上部にある滝は直登不能。右岸ルンゼから巻く。無数の小滝をやっつけると、大きな淵をもった10m雨乞ノ滝。左岸から大きく高巻くが、簡単に降りられそうにない。「クライムダウンできるよ」と攻撃的なのが松林。何ともタフな58歳である。だが、ここは懸垂で落ち口に下降。

そこから、すぐに4段ナメ滝。3段目から傾斜がきつくなり、滑りそうで怖い。トップの国府谷が左岸からロープを出してくれて一安心。草付きをスルスルって上がっていく後姿に、「やっぱり実力者は違うなあ」と感じる。小生と有富は、ここまで泳ぎまくっているため、ずぶ濡れ。3段目上部の淵も、腹をくくって泳ぐが、歯がガチガチと鳴って仕方がない。
怖かったのは4段目最上部。再びトップとなったが、出口の一歩は、ぎりぎりのフリクションで登るしかない。左岸に残置シュリンゲが下がっていて、「おいらに、ぶら下がりな」と盛んに色目をつかってくる。だが、あんな古臭い代物に体重をかけて、万が一抜けたら大事。誘惑に負けまいと、小さな岩の突起を頼りに何とか登りきった。
出口に後続を確保できるような支点はなく、ロープを伸ばして小さな木2本で確保。今思えば、小室の淵よりも、4段目が核心だったかな。

この後は、中村がトップ。素晴らしいスピードで遡行していく。若かりし頃、上越と東北の沢を攻めまくったという経歴、だてではない。松林、有富もガンガンと登っていく。実は、古傷の左膝が痛みはじめていたので、ピッチをあげられない。カンカンに熱した鉄串を刺されたような感じだ。
「テン場、まだかなあ」「もう限界だよ」なぞと思い始めたころ、中村がザックを下ろした。15時、蛇抜け沢とフルコンバ小屋窪の出合に到着。入渓から7時間、ようやく幕営となった。

流木を集め、焚き火を囲んで飯を食べる。食当ではないが、持参したアスパラ3束とオクラ3袋を茹でた。ドレッシングなしでも十分美味い。星が瞬く頃には、一日を遊び尽くした河童5人は疲れ果てて、次第に無口になっていく。皆、静かに火に当たっている。
「生きているって良いなあ。でも、この膝だからなあ。あと何回、皆と山に行けるやら」。うとうとしながら、妙にしんみりとしてしまった。

7月20日

夏の谷の朝は早い。4時40分、空はもう明るい。寒いので、松林さんが埋み火を熾すと、自然と皆が集まってきた。暖をとりながら、棒ラーメンを食べる。男5人がチンマリと小さな火を囲む光景は、滑稽でちょっぴり物悲しいかもしれない。

フルコンバ小屋窪へ入渓。とはいっても、大石と倒木だらけのガラガラの沢だけに面白くない。しばらくすると、階段状の滝、苔むしたスダレ状の滝が現れ、嬉しくなる。
源頭に近づくにつれ、沢は再び荒れはじめ、難儀する。やがて水は涸れて、長いつめに耐える。いいかげんに参ったころ、斜面が緩み人の声がした。登山道だった。

1時間近く休憩してから、再出発。丸川峠を越えて泉水谷林道に降りた。ここから、駐車場までの長かったこと。膝が痛んだけれども、水と戯れることができた。また訪れたい沢だった。

(記: 土井)

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