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鳳凰三山 正月合宿

2004/12/30(木)~2005/1/2(日)

メンバー:飯田・(L)清水・掛川・坂田・塩足・和内

2004年12月30日(木)

9:07。JR2月31日

甲府駅

にて静岡在住の掛川さんと合流後、タクシーにて夜叉神峠入り口に向かう。例年より少ない積雪とはいえ、タクシーのドアを開けた途端入り込む冬の冷気が鋭く肌を突き刺す。登山口近くの日溜りで共同装備を分配していると、突然、とんでもないところから見知らぬおじさんが現れた。日常の会社生活では絶対お目にかかれないクラシックなコスチュームに身を包むおじさん。笑顔を浮かべながら、我々の横を山に向かって悠然と通り過ぎる。その非日常的で個性的な出で立ち、背中にあるボロボロのキスリングと肩に担いだ銃を見てすっかり動揺した私は「り…、猟の方ですか?」と、おじさんの背中に向かって声をかけた。「どこからみてもあの格好は猟師でしょう?」とやんわり突っ            込む掛川さん。憧れのマタギ衆…。彼らのいる世界にこれから足を踏み入れようとしている。11:07峠に向かう雪道への一歩は、まるで結界を越えるような神妙な心持であった。樹林帯の中を急登し、12:30に夜叉神峠に到着。青空に映える雄々しい北岳が眼前に聳える。行ったことはないがよく耳にする「北岳バットレス」がある北岳。「バットレスってみえるのかな?」と目を凝らす。休憩後、再び北に向かい行動を開始。15:00杖立峠手前の「杖立峠道標」着。気温はグングン下がり、指先が手袋の中でかじかむ。道標より少し下った窪地に幕営。みるみる傾く陽の中でテント準備や水確保など、諸先輩の行動は手際よかった。今日は好天に恵まれたが、飯田さんによると明日は「二つ玉」のせいで天気が荒れるであろうとの予測。「二つ玉ぁ?」。会話の中で飛び交う耳慣れない用語。後に、玉=低気圧と教えてもらった。飯田さんに簡単に冬の天気の傾向について説明してもらったが、気象に関する私の一般知識があまりにも乏しく、打てば響くような反応を返すことができなかった。それを察してか、飯田さんは、明日ラジオの天気予報を聞きながら一緒に勉強しようと声をかけてくださった。ビールで乾杯後、気がつくとテントの外はすっかり夜の帳に包まれていた。今回の食当、坂田さんによる第一日目のディナーのメインはポトフ。ベーコン、ソーセージ、ブイヨンのダシとハーブの風味がじゃがいもと人参にたっぷりしみこみ、皆、額に汗を浮かべながら舌鼓を打った。1

朝5:30起床。カレー味の焼きそばで鋭気を充電し、一行は南御室小屋に向かい8:00に道標を後にした。見上げる空は果てしなく白く、鈍く寒々しい冬山の景色を一層色濃くしていた。鬱蒼とした雪かぶる樹林帯を延々と進む。杖立峠に差し掛かるころ、ついに雪がちらつき始め「二つ玉」に操られたそれは次第に激しさを増していった。手で払っても払っても雪がザックに降り積もる。本来の冬山の厳しさはこの比ではないことは想像できるが、初めてのこのような雪中行軍は私に冬山の過酷な一面をみせつけた。粉雪舞う中、途中いくつかのパーティーと行き交う。11:50南御室小屋に到着。雪未だ降り止まず、その日は小屋のテント場で早々に幕営し停滞することになった。雪はさらに強まり、遠く上空で不気味なうなりを上げる風の音に恐怖すら感じた。すると「ま、こんなときの停滞もまた楽しいもんさ」と、清水さん。このひとことでなんとなくホッとした。荒天の中、我々に続き他のパーティーも続々と幕営を決め込み、いつしか南御室小屋付近はテントでにぎやかになっていた。テントを設営し、酒と暖かい飲み物で体を温めながら語り合い2004年の大晦日は暮れて行く。その日の晩は年越しそばとちらし寿司だった。食当、坂田さんのセンスが光る。夜半になると雪も止み、風は相変わらず遠く頭上で不気味に轟いていたが、夜空には大粒の星が瞬いていた。明日の初日の出に期待し、見損なった紅白のマツケンサンバに思いを馳せながら、シュラフに入った。

2005年元旦

4:30起床。味噌仕立ての雑煮で新年を祝った。6:35空が薄っすら白み始めたころ南御室小屋を発ち、地蔵岳に続く山道の急登を開始した。すでに先行者によってトレイルが作られているとはいえ、新雪に足がもつれ、思うようにキックステップが踏めずに私はもがきながら歩む。銀世界の造形美を眺める心の余裕すらなく、必死に足元だけを見つめていると、やがて柔らかいオレンジ色の光が樹々の間から射し込み青白い雪面の上に拡がり始めた。立ち止まり振り返る。視線の先には、遥か尾根伝いに溢れださんばかりのまぶしい陽光を力強くたぎらせ、朝日が昇ろうとしていた。雪も木々も人間もすべてがその瞬間、自然界の奇跡の色に染められた。前日とは打って変わり、新年の朝は雲ひとつない青空が広がっていた。

ダイヤモンドダストが、冷えた空気の中をきらきら輝きながら舞う。初めてみる冬山の神秘に息を呑んだ。森林限界を越え一気に稜線に飛び出すと、そこは大小様々な岩が横たわる黄色い荒漠とした世界だった。そして前方には、雄大な山々が藍色の肌に雪化粧を纏い堂々と我々を待ち構えていた。その圧倒的な存在感に疲れも忘れ、しばし目の前に広がる壮大なパノラマを見渡しながら、思わず涙腺が緩んでしまった。山行の度に感動が更新されていく。一方、稜線上の凍てつくような強風は容赦なく我々をなぶり、厳しい現実に私を引き戻した。凍傷の不安がよぎる。振り返り、塩足さんに「あの…目出帽タイムでしょうか?」とおずおず訊ねる。掛川さんと塩足さんはすでに目出帽を装着していた。”忍び”のようだ。かっこいい。寒さで自分の口元の動きが怪しくなってきた。恥ずかしがっている場合じゃない。抵抗虚しくコソコソとゴレンジャーのような目出帽を被る。稜線の風は私の想像を陵駕していた。吹き飛ばされる恐怖で足がすくむ。清水さんが後方からやってきて「時々強く吹くから気をつけてね」とアドバイスしてくださった。所々バックリ不気味な口を開け巨岩が重なり散在する稜線を、一行は風にいたぶられながらひたすら前進する。途中、塩足さんが、足元の岩にこびりついた雪の造形「エビのシッポ」を教えてくれた。「揚げて食べるとうまいんだよ」と掛川さん。初めて歩く、突風吹きすさぶ冬の稜線は、スリルと恐怖に充分すぎるぐらい満ちていた。稜線のアップダウンを繰り返し、薬師岳小屋を通過、薬師岳、観音岳を経て、前方には地蔵岳が。空は一変雲が広がり、雪がちらつき始めた。オベリスクは、寒空の中孤独に聳えていた。地蔵岳を前にここでパーティーは二つに分かれ

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