北アルプス表銀座・槍ヶ岳縦走記録

日程:4月28日~5月4日(5月5日は予備日)
参加メンバー:掛川(L)、安達、坂田、後藤(記)
行程:北アルプス表銀座縦走(燕岳~蝶ヶ岳)~横尾~槍ヶ岳往復

8
第1日目(4/28)
新宿6番ホームに集合。30kg近いザックがやたらと重く感じる。この量は背負った事が無いが、大丈夫か?一抹の不安を覚える。帰りのラッシュに巻き込まれ大変難儀する。
安達さん、坂田さんと合流。坂田さんは食料担当のため、ザック以外にも大量の荷物を持っている。どうやってラッシュを乗りきったのだろうか?そしてこの荷物は果たして全部ザックに入るのか?
23:54新宿発ムーンライト信州81号に乗車のはずが、出発予定時刻を過ぎても電気トラブルのため車両到着せず。結局発車は予定の1時間後。特に気にしない事にする。

第2日目(4/29)
4:00頃 甲府にて掛川さん合流。
5:16 穂高駅着
信州に来ていた轟さんが迎えてくれる。
6:07 タクシーにて中房温泉着
他のパーティも多い。
7:00 行動開始 16℃ 風が強い、曇り
7:58 14℃天気良好
安達さんの足が痙攣。荷物と急登のせいか。雪道になる。アイゼンは不要。ピッケルのみ。
8:55 10℃
尾根筋に出ると強風、徐々に雨強くなる。
11:00
時折日差し有、サングラスを出す。樹林帯なので風が無い。北アルプス3大急登と荷物(20kg後半か)にかなりバテる。
11:47 合戦小屋到着
8℃ 曇り。稜線で風が強く、停滞すると大変寒い。
12:30頃 合戦小屋直後の急登
稜線に出るとみぞれ、強風。記録をつける余裕なし。
子供連れのお母さんと出会う。子供は軍手しかしていないが大丈夫か。こちらはペースが遅いので先に行かせる。
13:35 燕山荘着
小屋の西面は狂風。直立しがたい。掛川さんと僕のザックカバーが飛ばされる。掛川さんのカバーのみ回収。
テント設営。今回が初使用のICI6人用。雪面を掘り下げ、周囲を雪のブロックで固める。テントは背が高いせいか風の影響をかなり受ける。設営の予行演習をしていなかったため、設営に時間がかかる。隣の大学山岳部のパーティは人海作戦でかなり立派なものを作っていた。
1時間程度で設置完了。中に避難。暖房と衣料品の乾燥のためにMSR(ガソリンバーナー)を炊く。自分にも給油(アルコール)。
日没前に雨と風収まる。外に出ると夕暮れの赤い光に染まった幽玄の燕岳がみえる。大変美しい。燕山荘はG.W.期間のためか、かなり込んでいる。きれいなおねえさんが多い。
夕食にビールが出る。まさか缶を荷揚げしていたとは。メニューは鍋。うまかった。
21:00 就寝

第3日目(4/30)
4:00 起床
3:00起床予定が僕の時計のアラームが小さすぎて聞こえず。
朝食はジンギスカン、うどん。やたらとボリュームがある。テントの中が羊くさくなってしまった。今回は食料を軽量化したと聞いていたのに何故生肉が?
6:30 行動開始
3℃。幕営地にザックをデポして燕岳往復。
7:00 燕岳山頂
登山者多し。縦走路は残雪ほとんどなし。
7:30 幕営地へ戻る
ザックを回収し縦走開始。荷物がかなり軽くなった気がする。ビールがなくなったせいか?
9:20 蛙岩
気温高し、晴天。西面から吹く風が心地よい。蛙岩の通過に時間を要する。夏ルートは雪面の下、冬ルートはザイルが必要。他のパーティも停滞していたため、結局夏ルートを通る。滑落したら止まらないだろう。ザイルを出す。
稜線は風の当たる西面積雪なし。東面は雪庇あり。左右に夏と冬の表情が見えて面白い。
10:40 大天井岳まで1時間
バテる。自分の行動食がとても不味い。
12:00 大天井岳直下
掛川、坂田、後藤先行。坂田さんのピッチが早すぎて追いつけない。
12:45 大天井岳山頂
直下より200mほどの標高差を登高。大学生グループがいる。悔しいが彼らにはなかなか勝てそうに無い。写真を撮ってもらう。
13:05 大天荘着
大天荘は冬季休業中。冬季小屋もあったがテント設置。
13:45 安達さん到着
鵬翔コールが聞こえて安達さんが山頂に姿をあらわす。
前日の行程と幕営で濡れた装備・シュラフ等を干す。テントの設営場所が雪面でないため、心地よい。風が弱く日差しがあるので快適。穂高~槍ヶ岳のスカイラインが美しい。
水は吹き溜まりの雪を溶かして確保。
早々とテントに入り行動終了。夕飯は真空パックの鳥の照り焼き。一人分が3パックというのはさすがに多すぎやしないか?僕は全部食べきれずに明日の朝食にとっておく。
夜間も地形(コル)のわりに風弱し。穂高町の夜景が見える。他に大天荘付近に幕営したパーティは2組。

第4日目(5/1)
3:00 起床
朝飯は五目御飯、おでん、味噌汁。僕は昨日残した鳥も食べる。
5:40 出発
5度 晴れ(ガス有) 無風
出発直前にライチョウを見かける。まだ羽が白い。
尾根伝いに南へ縦走。穂高町辺りの田んぼに水が張ってあるのが見える。
イワヒバリがいる。
6:40 横通岳手前で小休止
縦走路に高低差があまりなく快適。
この辺りは登山者があまりいない。
8:00 常念乗越
常念岳が目前にそびえる。標高差400m程度か。常念小屋で天候を聞いたところ午後よりくずれるとのこと。
9:25 常念岳山頂
山頂付近着雪有。西風が強い。曇り。南西方向の乗鞍岳の辺りにかぶさっている雲塊が気掛かり。こちらに来なければよいが。
10:50 常念直下にて小休止
後続のチェコ人のカップルと話す。日本に観光に来たという。北アルプス表銀座を縦走した後、京都観光に行く予定だそうだ。2週間の予定というから結構ハードだ。ヨーロッパ人はやはり旅慣れしているのか。
11:20 樹林帯にて休息
風がさえぎられるため、雪上とは思えないほど暑い。坂田さんは半そでで行動している、鳥肌が立ってるんですが。自分には出来そうにない。
チェコ人の二人に追い越される。かなり健脚なようだ。こちらはバテ気味で追いつけない。
14:30 蝶槍
稜線は強風。天候が崩れてきたため、蝶ヶ岳への縦走はあきらめて横尾に下るルートをとる。携行した飲料水を使い果たしてしまい、坂田さんに分けてもらう。バテたせいか水の消費量が多い。
下山中樹林帯で雨が降り出す。安達さんが遅れてきたため、掛川、坂田、後藤が先行しテントを張ることにする。僕もスパッツバンドが取れやすくなってしまい、何度も直すはめになる。結局掛川さんのスペアをもらう。自分は用意すらしていなかったから、詰めが甘かった。
下山路に積雪が多く、雨で大変滑りやすい。足をとられて完全にバテる。先行の掛川さん、坂田さんの馬力について行けずかなり遅れる。
16:00 横尾着
BC設営。設営完了の頃、本格的な雨となる。
横尾山荘へ生ビールを飲みに行く。
付近の土手にふきのとうがたくさん出ている。国立公園だったが、いくらか頂いてふき味噌を作る。夕飯は中華丼、ビーフン、スープにふき味噌。酔っ払ったせいか、なかなか進まない。

第5日目(5/2)
6:00 起床
本日は行動予定がタイトでないため、周りが明るくなっても寝ていた。朝食はスパゲッティアラビアータ。唐辛子を炒める本格(風)のレトルトパックだったが、炒めたときに唐辛子の煙がテントの中に充満し、4人とも催涙ガスを嗅いだような状態になる。熊でもあるまいし。
9:15 出発
13度曇り、上空晴れ。ガス有
安達さんは上高地に下山。他のメンバーは蝶ヶ岳ピストンへ。
10:15 槍見台
ガスが晴れ快晴。穂高から槍までよく見渡せる。昨日の下山時は見る余裕など無かったが。
11:50 蝶ヶ岳山頂
微風。山頂付近は携帯電話の通話が可能だった。掛川さんが奥さんと話している。この日の行程は下山を残すのみだったので頂上には長い時間とどまる。
12:50 下山開始
前日の下山路と同じコースだったがザックが軽いせいか楽に下れる。体力、気力ともに余裕がでる。日差しが強くサングラスが必須。
4:10 横尾BC到着
前日と同じく横尾山荘にビールを飲みに行く。今日は野外で呑む。日差しがかげると急に気温も下がるのでテントに退散。運動後のビールが効いて寝てしまう。掛川さんすみません、何も手伝えませんでした。
夕食はカレー、スープ。
今回は当会九州支部が涸沢に定着していたが、会いに行く事が出来なかった。いつか合同山行でも行きたいものだ。

第6日目(5/3)
2:00 起床
朝飯はワンタン麺と餅。餅を入れると手軽にボリュームが増やせて便利だ。
4:10 出発。日の出前なのでヘッドランプをつけて行動する。
4:50二ノ俣谷分岐
-1度。空が明るくなる。ヘッドランプをしまう。
5:50ババ平
6:40大曲
日が昇ったためサングラスをつける。傾斜が急になる。アイゼン装着。
8:00ヒュッテ大槍直下
やっと大槍が見える。トレースが明確なためアイゼンを外す。
他にもかなりのパーティがいるが、大抵下山してくる。槍の肩の小屋に泊まっていたようだ。
スキーヤーを数人見かける。あれがシュプールを描くって事なのか。今度やってみたくなる。
ヘリが何度か大槍周辺を旋回してまた去っていく。荷揚げ用かと思ったが、遊覧飛行だったのかもしれない。
9:25 槍ヶ岳山荘
夏の槍沢はやたらと長いと聞くが(僕は今回が初めて)、積雪があるためさほど苦労せずに登れてしまった。しかし雪面が太陽光を反射してとてもまぶしい。凹面鏡の上で焼かれているような感じだろうか。
10:00 槍ヶ岳山頂
360度の展望。下界が雲に覆われていて、山の頂きだけ顔を出している。富士から越後の峰々まで、浅間山の噴煙も確認できる。登山者が(比較的)少ないせいか、10分以上山頂に滞在できた。普段は後続に押し出されてしまうようだが。
10:15 下山開始
雪の表面が大変柔らかく滑るが、トレースの上を歩かなければ歩きやすい。掛川さんと坂田さんはシリセードでさっさと滑っていってしまった。結局二人は雪まみれになっていたが。僕は着ていたウェアに防水性が無かったため頑固に歩いた。
12:37 槍沢ロッジ
ほとんど休憩無しで下ってしまったが、歩きやすかったため、さほど体力は消耗しなかった。槍沢ロッジには登山者が多く、本当にごった返している感じだった。有名なルートのせいか。二日目に幕営した燕山荘も同じ感じだったが、北アルプスの名のあるルートは他の山域と比べて本当に登山者が多いように感じた。
槍沢は雪解けのせいか水量が大変多い。しかもとても澄んでいる。まるで屋久島の沢のようだ。横尾に戻る途中、掛川さんが槍沢に泳ぐ岩魚を見つける。なかなかおいしそうだったが釣る手段がない。3人で5分くらいそいつを眺めていた。
14:10 横尾BC到着
戻るとやっぱりビールを呑みに行ってしまった。横尾の辺りで1杯700円は安い。僕は今回一番アルコールに弱かったので、またもやぐでんぐでんになってしまう。2杯呑んだだけだったのに。
随分焼けたなといわれたので確認してみると、ゴーグルとバンダナの跡がくっきり残って、他の部分は真っ赤。日焼け止めを塗らなかったせいか?まるでやけどのようにひりひりする。
夕飯は散らしずしと味噌汁。酔っ払いすぎてほとんど食べられず(器を持って寝てしまった)。残りは次の日の行動食となってしまった。この山行を始めてから酒を飲まなかった日が無い。

第7日目(5/4)
朝食は牛丼、カルビ丼、スープ。味が濃くてしょっぱいが、塩分の摂取が必要だからかえってちょうど良かったかもしれない。
BC撤収
8:30 出発
9:15 徳沢
テント場でぬれたテントを干す。
掛川さんがごみをあさりにきた猿に負ける。とても体格がよかった。あれには勝てそうに無い。
10:15 徳沢発
途中、明神池に寄り道する。この辺りまで来ると登山でもキャンプでもない、観光の人が多い。
12:00 上高地
本当に人が多い。河童橋を渡るとき、御爺さんにどこまで登ってきたのかと聞かれる。きっとすごく焼けていたためだろう。槍ヶ岳です、と答えるのが誇らしい。
村営のホテルで一風呂浴びる。風呂の鏡で改めて自分の顔を見ると(別にまじまじと見るほどの顔でもないが)本当に焼けている。まるでパンダかタヌキだ。風呂場の窓から前穂がよく見えた。
上高地より新島々までバス。新島々より松本まで電車を使う。
僕はバスで寝ているうちに峠を越えてしまったが、上高地に入るのが今ほど容易でない頃は、燕岳、あるいは常念乗越、徳本峠経由でこの山域に入ったという。これらの行程はそれだけで大変なものだが、そこまでして入るのはこの山域が崇高であるためだと思う。僕は北アルプスへ来たのは今回が初めてだったが、確かに、人が言うとおり、北アルプスは美しい。出来る事ならばまた訪れたいと思う。願わくばこの美しさが人に汚されず永遠に続く事を。

帰ってから日焼けした皮膚がどんどんむけていった。はたしてひと皮むけた男になったのか?さあどうだかね。

2005.06.02 後藤 祐介(66期) 記

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