日 時:2006年11月25日(土)~26日(日)
参加者:平野喜一、芳野菜実、芳野達郎、
報告者:平野喜一
今回の山行きのコンセプトは、正月休みを利用した2006年冬山合宿に向け、雪の付くこの時期に冬山トレーニングの一環として、とにかく雪山を歩く事。
候補として西穂高岳の稜線歩きを考えていたが、仕事の都合により東京出発は25(土)の朝からしか行けなくなり、関東から比較的アプローチの近い赤岩尾根からの鹿島槍ヶ岳と遠見尾根からの五竜岳に的を絞り、最終的には過去冬に二度ほど下降の経験がある赤岩尾根を目指す事となった。
たまたま同じタイミングで稜線歩きの計画をした坂田さんは、23日~24日で遠見尾根から五竜岳を単独で挑み、ワカンなしのラッセルに苦戦し五竜山荘手前で引き返したそうだ。
坂田さんとは正月に早月尾根を予定しており、お互い冬山トレーニングの良い刺激となる。
雪山トレーニングにはなるべく沢山のメンバーと行きたいが、休みの調整がなかなか大変で皆が揃うように思うがこれが結構難しい。
今回の参加者である芳野夫妻とは広沢寺ゲレンデのアイゼンワークやザイル際の飲み会でご一緒したが、始めて本格的な山行きのテント泊を共にするメンバーである。
私も芳野さんご夫妻も共に別の社会人山岳会を経験しており、山に対する取り組みで何か共感するものを感じ、テント生活やこれまで培って来た山登りの流派みたいなものを知るのがとても楽しみであった。
25(土)朝、まだ暗いうちから東急田園都市線の電車に乗り、待ち合わせ場所の立川駅には6時14分に到着して、芳野さんの車にピックアップさせてもらう。
天候は予報通り朝から晴天で、中央高速では来週予定している富士山や南アルプス・八ヶ岳の山々が車の中から見渡せる。
高速道を降りコンビニでレーション買出し後、一路鹿島へ向かう途中見渡せる爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳の稜線にはかなりの積雪が見えた。
前日からの移動であれば朝一番から登る事が出来るが、あまりの天気の良さから、移動時間のロスもあり、いつまでこの晴天が続くのか心配になる。
10時10分大谷原に到着。他に駐車している車はなく登山者は我々だけかと思うが、直ぐにタクシーで3人の登山者が降りて来たので、赤岩尾根のトレースに期待が持てる。
靴を登山靴に履き替え登る準備をして10時20分出発、林道の端には積雪が残り今年は既に何度か大きな降雪があった感じがする。
11時10分西俣着。休憩の後11時20分吉野(菜)さんを先頭にこれからいよいよ赤岩尾根の登りにとりかかる。かなり気温が高く手袋なしの素手でピッケルを持っても冷たく感じない。雪のついた尾根をタップリと汗をかきながら快調に登り、12時50分高千穂平着。
最後を歩く芳野(達)さんはお腹の調子があまり良くないらしく少し遅れぎみだが、トレース付きとは言え順調なペースでここまで進むのは、流石に山を登り込んだ山やと感心する。
高千穂平から20分程上がった標高2200M付近に平な地点があり、雪を整地した幕営後をお借りして本日の宿泊場所にと思ったが、時計は13時10分で宿泊にはまだ時間が早く、崩れそうにない晴天と上まで続くトレースが残っている事もあり、明日の行程を考え冷池山荘まで足を伸ばす事にした。
赤岩尾根は東側に面しており冬の日差しは傾斜が緩い為、2300Mを過ぎたあたりになると、太陽の日差しを受けない状態では流石に素手では冷たく感じ、手袋とオーバー手袋をつけて進む。
雪の付いた赤岩尾根は最後の稜線に突き上げるトラバースが難しく、トレースは夏道より少し手前からデブリ後のルンゼを横断し、右側のやせ尾根を細めの枝を掴みながら登るルートに取り付けられていた。
途中かなりの急登で夏道に上がり、結局この日はアイゼンを装着することもなく、15時10分分岐到着。しばらくは日差しを受けなかったので寒さを感じていたが、相変わらずの晴天で、稜線で受ける日差しはとても暖かく思えた。
気温をみると私の腕時計では18度になっている。これは体温も感知しているのであてにならない。芳野(達)さんのザック脇に取り付けた温度計は14度を示しており、相当に気温が高いのは確かであろう。
明日往復で登る予定の鹿島槍ヶ岳の山頂や、遠くには正月合宿に予定している剣岳の八ツ峰稜線や小窓もはっきり見る事が出来た。
15時30分冷池山荘着。
既に小屋の営業は終了しており冬季小屋に泊まると言う単独の人が2名の他、小屋脇にテントが一張りのみ。
芳野さんが持参してくれた新品の3人用エスパースは、比較的小柄な我々3名には十分なスペースであり、早速ウイスキーとカルアミルクを飲みながらビニール袋に集めた雪を溶かす。
雪の山では水作りから調理が始まる為、これまでのテント生活ではいつも水作りは私の役割だったが、今回は芳野さんに食材の手配や水作りを手際よく進めてもらい、少し乾燥させた白菜や豚肉入りのキムチ鍋をアルファ米と共に頂く。
山好き3人の話題は山への取り組み姿勢の話となり、山登りは基礎体力が重要で一番のトレーニングは山に登る事。冬山シーズン前の山行きを共にして共感する山談義はつきない。
風もなく日が落ちてもあまり気温は下がらず、テントの外では星も輝いていた。
21時を過ぎたところでそろそろ眠りにつき、夜は風の音で何度か目を覚ましたが震えるほどの事もなく、翌26日(日)5時25分に起床。
外の天候は曇りで風は微風、吐く息が白くなくテント内もほとんど凍っていない。
予報では曇りから雨となっており心配な感じではあるが、何とか雪が降らないよう今日の天気を願いながら、五目飯のアルファ米で作った雑炊で暖かい朝食を頂く。
6時45分雨具の上下にアイゼンを装着し、レーションと水のみを持って鹿島槍ヶ岳へ向かう。
出発して直ぐテルモスをザックにしまっていない事に気づき、テント内の脇に転がっている濃紺のカバーをつけたテルモスをザックに入れ再出発。
布引山までの長い登りでは、曇りがちの天気はあまり悪くなる様子ではなく時々雲の合間に青空も見えるが、休憩なしでそのまま稜線を進むと多少風の影響を受け寒さを感じるようになった。
8時30分鹿島槍ヶ岳の山頂着。頂上はガスで視界は悪く、テルモスに詰めた甘い紅茶で体を暖めた後は早々に下山を開始。
9時30分冷池山荘脇に戻りテントを撤収。
出発前に軽い食事を済ませた後、残っているトレースをたどり分岐から前日登った赤岩尾根を下るが、かなり湿り気の多い雪質で団子状態のアイゼンをピッケルで叩きこまめに雪を落としながら進む。高千穂平を経由して雪が少なくなった地点でアイゼンを外し、汗だくとなった