ニュージーランド タラナキ山

2004/3/9(火)

単独:掛川義孝

頂上付近がややとがっている所を除けば見た目は富士山とよく似ている。標高は2518メートル。タラナキ山のふもとにニュープリマスという町がある。この町は、私のニュージーランド滞在先のスコット夫妻の故郷である。彼らの親戚もたくさん住んでおり、これまで3回訪れていた。町からは天気が良ければ、円錐形の美しい山が見ることができた。いつか登りたいと思っていたが、なかなかチャンスがつかめなかった。今回彼らの親戚のレオ&べブ夫妻に遊びにおいでと誘われて、この機会にタラナキに登りたいと思った。

3月8日(月)

この日はTaranaki Anniversaryで祝日だった。Anniversaryというのは、この地域の創立記念日のようなもので、そのため各地域によってAnniversaryは異なる。季節的には3月は夏の終わりから秋に入ったところである。ニュープリマスに着いて、早速新聞で天気をチェックしてみた。明日までは好天が続くがその後天気は下り坂だという。明日がベストだろうなと思っていたら、ベブも天気予報を読んで、明日登ったらというので翌朝口まで車で送ってもらうことにした。

3月9日(火)

朝6時半過ぎに家を出発する。ニュープリマスから約13キロのエグモント村 Egmont Villageでエグモント道路Egmont Rdに入り約16キロ登った道路終点が、North Egmontの登山口である。僕は車で送ってもらったが、ニュープリマスからシャトルバスが登山口まで出ている。これは宿泊先もしくはインフォメーションセンターで手配できると思う。登山口の駐車場に7時頃着いた。登山口にはビジターセンターがあり、ここで天候の確認や登山道の状況などを知ることが出来る。登山届けもここに提出する。

ニュージーランドではDOC(Department of Conservation自然保護局)という公的機関が国内の全ての国立公園や森林公園を管理しており、ビジターセンターや山小屋の運営なども行っている。1泊以上のトランピング(トレッキングと同じ意味でこの国では通常この言葉を使う)をする場合は必ずドックにコース、日程などを届けねばならない。終了したら再び訪れ終わったことを報告する。日帰りの山行でも、所定の用紙があるので名前や連絡先、行動予定などを記入すべきなのだが、7時でまだ開いてなかったようなので届けは出さずに登山を開始した。登る前に気になっていた点は頂上付近

にどれだけ雪が残っているかということだった。今回僕が日本から持ってきたガイドブック(ニュージーランドハイキング案内:滑田 広志著 山と渓谷社刊)には「タラナキ山頂上付近はアイスバーンになっているため、アイゼンをつけて主峰に登る」と書いてある。僕はアイゼンもピッケルも持っていないのでアイスバーンが出てきたらそれまでである。

駐車場の左側のトラックに入る。15分程歩いたら、視界が開けて正面にタラナキ山が出てきて朝焼けに染まり始めた。左手の尾根上にテレビの中継塔が見える。この中腹のテレビ塔までは四駆車なら登れる道がある。わだちのところだけコンクリを敷いて滑り止めの石が埋め込んである。この辺りは The Puffer(息切れ)という名の通り、ずっと急な上り坂で、歩き始めの体にはきつい。日本を出てから本格的な登山をするのも今回が初めてだった。尾根に出ると、ニュープリマスの方は見渡す限りの雲海でちょうど朝日が昇るところだった。その景色は富士山の6合目からの景色を思い起こさせた。テレビ塔を過ぎ、8:35Tahurangi Lodgeに着く。ここで一休みをしていたら、後から来た3人組と単独の登山者が追いついてきた。ロッジを出てすこし登ると、タラナキ山の周りをぐるりとまわる道と頂上への道との分岐がある。ここから先はゴツゴツした岩が転がる沢沿いに登る。荒々しい岩場の下を通過し、木製の階段に取り付く。これは苔を保護する為に設けられたとガイドにはあるが、階段がないととても急で登れそうにない。階段が終わった尾根からはすべりやすい富士山の砂走りのような斜面を登る。傾斜が富士山より急でとても歩きづらい。二歩登って一歩下がるような感じだ。ところどころにポールが立っていてルートを示している。時々下から雲が上がってくるがだいたい晴れて視界はいい。ニュープリマスの町も、海岸線もよく見える。頂上に近づくにつれ、ところどころに残雪が現れ始めた。歩きづらい砂の斜面は終わり、岩場を頂上に向かう。やがてSummer entranceと呼ばれる頂上火口への入り口に着く。この部分は狭くて、右手は断崖で高度もあり、日が当たらないためところどころに雪が残っている。ここを通過すると火口に着く。火口は一面雪原で、硬くクラストしているがなんの問題もない。左手は荒々しい、通称Sharks tooth(サメの歯)と呼ばれるぎざぎざの岩壁がそそりたっている。右手のほうが高そうだが、さて頂上へはどうして行くのかと思案していたら、後から人が来たので聞いてみたが、彼も分からないという。もう一人僕らの進行方向から人が来たのでその人に聞いて、頂上への道を教えてもらう。心配していた程、雪はなく、雪のない斜面を選んで頂上に向かう。

11:30特に困難もなく、頂上に着く。想像していたより、頂上は広かった。前に登った人はPin pointだよ、なんていっていたが、どうしてかなり広々としている。頂上からは、僕のホームスティしている町の背後の山、ルアペフ山も良く見えた。携帯でホームスティ先の家に電話し、今頂上からだよと伝えたら興奮していた。続々と人が登ってくる。ドイツ人が多いようだ。天気もよく、視界はいい。ベブは、頂上からは南島も見えると言っていたが残念ながらそれは見えなかった。しかし、一方はタスマン海と海岸線、もう一方は緑の広がるトンガリロ国立公園の景色を堪能することが出来た。頂上からは急な下りを火口へ降りていく。ここが正しいルートだった。ここに雪があれば、確かにアイゼンとピッケルが必要なところである。下りは往路をたどる。滑りやすい斜面は気がぬけないので、疲れた。登りは約4時間かかったが、下りは約3時間でビジターセンターに着いた。15:30着。水を1リットル持っていったが暑くて、もう1リットル持っていけばよかったと思った。ビジターセンターを見学して帰る。(記 掛川義孝)

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