ローリング・ライアンリバー遡行記 ニュージーランド

2004/3/16(火)~22(月)

単独:掛川義孝 

Roaring Lion riverとは、咆哮する獅子の川という意味である。場所はニュージーランドの南島の北西部 Kahurangiカフランギ国立公園にあり、Karameaカラメア川の一支流に属する。僕は、日本で沢登りのガイドブックに紹介されていて、その存在を知った。行程は長いが基本的にザイルは使う必要はないようで、しかも釣りが楽しめそうだ。今回南島の旅行の最大の目的はこの川の遡行であった。ガイドブックには「技術的には2級、総合的には4級。未知なものへの経験が必要」と書いてあり、未知への経験とはなんか矛盾しているような気がした。ニュージーランドでは、新聞によくアウトドアでの事故や救助に関する記事が出てくる。そういう記事にはニュージーランド人kiwiがからんでいるものもあるが、外国人がからんでいるものが多い。特にMt Cook辺りで起きる事故はほとんど外国人が起こしている。そういう記事を見ると、こちらの人はまた外国人が無茶なことをしてという目で見る。実際、忠告を聞かなかったり、不完全な装備やいい加減な計画が原因での事故も多い。一種の警告の意味でもあるのだろうが、新聞で厳しい口調で批判されているのを読むたびにローリング・ライアンに行くのをやめようかなと何度も考えた。万が一遭難でもした

ら、僕のホストファミリーにもとても迷惑をかけることになるし、せっかく知り合いになった町の人にも会わせる顔がない。そんな時、かみさんが日本から送ってくれたビデオを見た。NHKで放映された、「幻の大滝」という剣大滝のビデオだった。それを見ていたら、なんだか俄然やる気が沸いてきて、やってみる決心がついた。

もともと日本を出るときは、やる予定はなかったし、そもそも南島に行くつもりすらなかった。今回のニュージーランド滞在の目的は一応英語を学ぶということで、観光旅行をすることではないと思っていた。それでも何故かローリング・ライアンリバーの遡行の部分だけはコピーをとって持ってきていた。2月にニュージーランドにやってくる妻にツェルトとエアーマット、20メートルの8ミリ補助ザイル、コッヘルセット、ガスコンロのヘッド、コンパス、冬用の下着、手袋を80リッターのザックに入れて持ってきてと頼む。雨具は自分で持ってきていた。寝袋はこちらで知り合いに借りるつもりだったが、ガスのカートリッジを買おうと地元のアウトドアショップに行ったら、

面白いものを見つけた。それはシュラフカバーみたいなもので、綿もない一見ただの頑丈そうなビニールの袋だが、防水性と透湿性を備えており野外でテント無しで寝るためのものだった。値段も75ドル(6000円)程度と安く、これなら日本でも使えるだろうし、かみさんもそれなら文句は言わないだろうと思った。地図は、Auckland オークランドで、map centerというところで揃えた。ニュージーランドには全国土をカバーしているのは5万分の1の地図しかない。カラーで、一枚15ドル(1000円)とけっこう高い。それでも今回の山行のエリアをカバーするために、地図を4枚購入した。足はレンタカーを借りることにし、これはインターネットで探して電話で予約した。

3月15日

滞在先のオハクネからバスでウェリントンに向かう。オハクネには一日1本しか町を出るバスがない。8時頃ウェリントン着。翌朝8時のフェリーで南島に渡る予定で、この日はウェリントンのバックパッカーに泊まる。バックパッカーというのは、ダブルベッドやシングルベッド付の部屋もあるが、主にバンクという2段ベッドでシェア(4人部屋)かドーム(10人部屋)がメインの安い宿のことで、トイレ、シャワー、炊事場を共同で利用する。大体メンバーになると一泊20ドル(1500円)前後で利用できる。メンバーになるといっても40ドルでカードを購入し、自分の名前とパスポートナンバーを裏に記入するだけである。これは20ドル分のテレフォンカードでもあり、10泊すれば元がとれる。同じような施設にユースホステルがある。値段もほぼ同じだが、バックパッカーは場所によって当たりはずれがあるのに対し、こちらはほぼ高いクオリティを備えている。ただ、バックパッカーはどんな小さな町にもあるが、ユースは数が限られている。そのため、予約も取りにくいとも聞いていた。12月から3月はハイシーズンでもある。今回の旅行ではどこでも宿をとれるようにバックパッカーを利用することにした。

3月16日

ウェリントンは小雨だった。前日4人部屋に泊まったが僕以外は全て女性で、こいつは幸先がいいぞと思ったのに、南島に渡って雨だったらどうしようと不安になった。8時に予定通り出港し、約2時間ちょいでピクトンという町に着く。南島は晴れていた。ここで11時から車を借りるようにしていたのだが、レンタカー会社のオフィスに行ったら今、車を手配しているので1時間後にもう一度来てくれと言われた。僕もすっかりこの国のペースにはまってしまったのか、根がのんびりしているせいか、別に頭にくることもなく素直に、はいと言って行こうとしたら、実はキャンピングカーが一台キャンセルになったのだが、よかったらそれを使わないかと言う。もちろん同じ金額でだ。僕はカローラの2ドアタイプのエコノミーカーという一番安いクラスの車を予約していた。僕は是非使いたいと喜んで彼女の提案を受け入れた。時々日本人に対してすごく親切な人がいる。子供が日本語を勉強してるとか、友人もしくは家族に日本人と結婚した人がいる、日本にいったことがあるとかの理由で日本人に対して親近感を持っているのだろう。逆に日本人が嫌いという人もいると思うが、幸い僕はまだ会ったことがない。

1時間後に来たキャンピングカーは白のタウンエースだった。後部のシートをはずしてマットが敷いてある。大人二人は十分横になれる。おお、久世の車がこんなところで第二の人生を歩んでいたのかと感激した。中にクーラーボックスもある。僕は見積り通り一日38ドル(約3000円)で24日間のお金を払って、12時にピクトンを出発した。今日は入山口のコブ湖まで行く予定だ。その前に、モツエカという町でDOCに行き、川と、天気、途中のルート状況などを確認し、途中で宿泊する山小屋のチケットを購入し、予定を報告しなければならない。それと、スーパーで食料の買出しと、どこかで釣りのライセンスを手に入れる必要があった。ニ

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