北岳バットレス山行報告

日時: 2010年6月25日(金) – 26日(土)
山域: 北岳バットレスピラミッドフェース – 第四尾根(南アルプス)
参加者: 国府谷(L)・松林
行程:
前夜: 調布駅(22:00) – 芦安駐車場(車中泊)(1:00)
第1日目: 駐車場(5:00) – (乗合タクシー) – 広河原(5:50/6:15) – バットレス下部岩壁Dガリー(11:30) – ピラミッドフェース – 第四尾根 – 枯木テラス上部
第2日目: 枯木テラス上部(4:50) – 北岳山頂(5:50) – 八本歯コル – 二股 – 御池小屋(10:30) – 広河原(11:50) – (乗合タクシー) – 芦安駐車場

芦安駐車場からの乗合タクシーは1200円。ラジオでワールドカップデンマーク戦の中継(3 – 1で勝利)に興奮し、睡眠不足が解消できないままに広河原へ到着。

広河原からは大樺沢ルートをとった。このルート、冬季に大規模な雪崩があったらしく、夏道は崩壊・埋没し根元でへし折れた木々が谷をふさいでいる。沢は折から増水。先行組が断念して下山してきた。雪渓に出るまでバリエーションのようだったが国府谷リーダーの「うん?どうってことない!」の一言で突き進む。二股手前からの雪渓は雪がクサりまたまた体力を消耗したものの、国府谷Lはすたすたと突き進む。牛歩の私との間隔は開くばかり。予定をかなりオーバーしてバットレス下部岩壁のDガリー取り付きにやっと着いたのが11:30。ここでも問題発生。下部岩壁と雪渓の間には1m幅の深いシュルンドが口を開けている。先端は今にも崩れそうだ。さすが国府谷LはDガリー左側からに忍者のように渡る。あの人の前では雪も崩れないから不思議だ。

壁には我われだけ。誰もいない!金曜日のせいか?今年は山も荒れているし雪が多くて人が入っていないんじゃない? 国府谷Lとはちがってこちらは不安が増してくる。
ピラミッドフェース1p目、浅い凹角を40m、2p目の草付バンド。残雪があるじゃん!右側からまいて40m、3p目スラブ25m、4p30m目くらいから残置支点がめっきり少なくなった。てごろな支点はどれもカタカタゆるんでいる。このルート最近誰も登ってないんじゃない?

バテバテの上に荷物がやたら重い!脚が挙がらない。出発前の華麗に岩壁を登るイメージはどこえやら。やたらヌンチャク、フレンズをつかみまくり、残置支点にシュリンゲを掛けてアブミの代用で立ち上る。もう面子もへったくれもない。とにかく体を持ち揚げなければ。上がるのは息ばかり、口の中はカラカラだ。カニの縦バイならぬ亀の縦バイだ。8p目、クラック先のハイマツを抜けると第四尾根にひょいと出た。ピラミッドの最後の核心は避けたルートになったが、ザックの加重で体が限界に近いところまで消耗してしまっていた。国府谷Lの冷ややかな視線の中、勝手に長い休憩のあと第四尾根はつるべでマッチ箱の頭まで。懸垂でテラスに降りた頃にはすでに19時をまわっていた。周囲の景色がモノトーンに変わり出し、足元の明るい間に北岳山荘に着くことは到底無理。枯木のテラス先の終了点とおぼしきテラスでビバークすることにした。すぐ近くに残雪もある。幅1m、ハイマツでビレイをとる。横並びに谷に脚を投げ出してテントの口を開け、袋状にかぶる。岩を背にすわった状態だ。横にはなれないがなかなか快適だ。国府谷Lには悪いがバットレスでのビバーク願望のあった私は大満足。晩飯はα米の五目飯と卵スープ・ソーセージ・コーヒーで場所に似合わず豪華な食事だった。かぶったテントの隙間から見える甲府の街明かりはきれいに瞬いている。これなんだよ!私のやりたかった岩壁のビバークは!満げな国府谷さんの横で私だけ大満足であった。

風も強くなり夜半になってパラパラと雨がたたき出すと急に冷え込んでくる。座ったままで体を丸くできないから脚から震えがくる。3時半頃に寒さで我慢できずガスカードリッジで暖を取りそのまま早い朝食をとる。辺りから鳥の鳴き声がする頃には雨は上がり撤収4:50出発。眺望は良いが上空は雲。今日は八つも富士も見えない。時折小雨が当たる程度で寒くは無い。

ところがここから山頂まで時間がかかった。雨で岩面が濡れている上、ルート上に残雪が多い。迂回路は雪解け後でゆるんでおり足場が悪く滑る。ロープを出していないのですべったらアウト。昨日以上に緊張の連続。多分、ここが今回の一番の核心だったように感じた。

稜線に出たところでガッチリと国府谷さんに感謝感謝の握手をした。

北岳山頂からは八本歯のコル、二股、白根御池小屋を経由して広河原に降りた。最後は数組のパーティーに追い越されひざと腰にもケタケタ笑い出されるほどバテバテになり、強まった雨と汗でずぶぬれになってなさけなく下山した。10:30。

広河原ターミナルではこの日、山開きのイベントの真っ最中。なんと暖かい天ぷらそば・桃がタダ。とたんに顔がゆるみ、目が輝いた。満足の後は爆睡の乗合タクシーで芦安駐車場に着いた。

体はガタガタ。声も出したくないほど疲れたが大満足の経験だった。マイペースの私に最後まで付き合ってくれた国府谷Lには心底申し訳なかったが。

(記: 松林)

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