日時: 2005年12月3日(土)
参加者: 坂田(単独)
山域: 富士山
形態: 耐寒訓練
行程: スバルライン~3250mで敗退
今シーズンこそはガンガン登るぞ!と気合いの冬。スタートはもちろん富士山での耐寒&耐風訓練。誰も集まらず(涙)。けどスタートで引き下がる訳には行かず、単独で登ることにする。鵬翔に入って冬を3回は迎えたと思うが、なんと単独は初めてなのだ。一人で山を登るなんて考えられなかったが(一人だと根性が続かない)、メスナーを読み始めてその気になってしまった。
まず第1の関門であるスバルラインは定時で開通。五合目の駐車場は強風で停めた車が揺さぶられる。すごい雪煙に気分も沈む。風で飛ばされるのか今シーズンはほとんど雪がついていない。もう10時かぁ、と時間にせかされて出発。計画ではギリギリの行動時間のはずなのでいつまでものんびりはしてられない。荷物は軽い。70リットルザックだが、寝袋なし、ツエルトなし、食事はジフィーズなしと過去最軽量を謳いたいくらいだ。
一人だとハイペースだ。飛ばし過ぎてすぐにバテるのは目に見えているのだが、気持ちにゆとりを持てないのだろう。せっかちに歩く。あっという間に単独も混じった5パーティくらいを抜き去れば、もう前には誰も居ない。6合目を過ぎると振り返っても人の気配を感じなくなった。週末の富士山がこんなに寂しいとは。
雪がほとんどない分、巻き上げられる砂礫がすごい。全身が埃っぽくなる。ざらざらの道には氷が張り付き、滑るのでアイゼンを付ける。アイゼンを履くとガリガリと引っ掛けて歩きにくい。なんとも中途半端なコンディションだ。3000メートルを超えるといよいよ風が強く、柵に張られた鎖を掴まないと進めなくなった。風のやみ間がほとんどないのが気の利かないところだ。先週末は静岡山岳会が富士山に登頂しているが、第1日目は3250mまでと聞いていることもあってもうちょっと進むことにする。3250mの小屋を目前にした最後の100mは1歩1歩がきつかった。まだ昼前だったが、これより上で体を風にさらすことに恐怖すら感じるほどで、続きは明日だ。ここでツエルトを広げることは無謀だと悟り、7合目まで下ることにする。昨シーズン、ビバークした地点だ。下りは何度か風に押し倒され、登山道をずるずる滑った。見慣れた場所に着いたことにほっとする間もなく、必死にツエルトを広げてどうにか柵にツエルトをくくりつける。中に入ってもはためき過ぎるツエルトを抑えなければならず落ち着かない。ようやく靴でも脱ごうかと思ったその時、ビリッと音がしたかと思うとツエルトが真ん中の縫い目から避けてしまった。しばらく使われていない会のツエルト。劣化していたのだろうか。呆然としつつもテープをとりだして張ろうとするが、テープがツエルトにくっつかない。星空ビバークをするか、下山するか迷う。最後は砂礫を浴びながら寝ることに嫌気がさし、下山を決める。根性なし!
下りは登りの何倍も時間を食った気がする。登山道沿いに設置された風防を掴みながら少しずつ下る。7合目の下部にテントを見付けたが、他のパーティのほとんどは6合目までとしたようだ。佐藤小屋から吉田口の方へ下りてしまい、余計な歩きをしてしまった。駐車場に着いたのは18時近く。スバルラインは使えないので車で寝ることにする。敗退の実感が嫌でも沸いてくる。これで良かったのか、何度も思い返す。初めての単独で、初めて下した敗退の決断。後味がなんとも悪い。「勇気ある敗退」なんて、俺には使えない。根性なしに敗退なんて簡単なことだ。自分に負けたのだ。
(記: 坂田)