屋久島へ…

日時:2007/4/27(金)~30(月)
山域:屋久島
形態:縦走
参加者:坂田(L)・坂本・志村
行程:4月27日:淀川登山口~淀川小屋~淀川右俣~石塚小屋
4月28日:石塚小屋~黒味岳~宮之浦岳~新高塚小屋~(縄文杉へピストン)
4月29日:新高塚小屋~永田岳~鹿之沢小屋~第二休憩所付近
4月30日:第二休憩所付近~永田歩道入口~永田バス停

27日(金)曇り 6:30 安房よりタクシーで淀川登山口に向かう
途中大きな屋久杉を見ながら夢うつつの中。タクシーを降りるとひんやりとした空気に包まれた。小さな駐車場は一杯だ。殆どがレンタカーなので、日帰りピストンの登山者だろう。
私たちは4日間の縦走。共同装備の殆どを坂田さん坂本さんに持ってもらっているので、この時点では冬山に比べて格段に軽いザックに感じられる。歩き始め、「最初は自分のペースでいいから」とトップに歩く。私はトップが苦手だ。ペースを自分で作る事が出来ない。自分にとって早いのか遅いのか分からずとりあえず、一定の速度に気を付けて歩く。高度が上がらないまま、散歩道のような歩道を歩くと淀川小屋に到着した。「コースタイム通りだったよ」との言葉に取りあえずほっとする。
今回の計画は、3人のそれぞれの希望が取り入れられている。最初は坂本さん希望の沢登りだ。私は沢が怖いので躊躇していたけれど、「ここの沢は相当綺麗らしい!!簡単みたいだよ~」と説得されていた。小屋で仕度を整え、入渓する。最初は坂田さん。「冷たい!」私も恐る恐る入ってみる。…冷たい水が足を麻痺させる。そこは沢というより川のような幅と深さを持っている。なるべく浅い場所を選んで進む。今回の為に買った沢用のスパッツは荷物の多さに家に置いて着てしまった。沢は薄いエメラルドグリーンに澄み渡る水を湛え、周りの深い森や苔が白い岩を浮き立たせている。所々にあるポットホール(穴)が景観にユーモラスなアクセントを加えている。
「…これは綺麗だぁ」
周りに気を取られ、滑り転びながら進む。腰まで浸かると本当に寒い!時々陽が差し、一瞬きらめくも、太陽はすぐに隠れてしまう。沢も中々高度を上げない。ゆったりとした沢を延々と進む。ようやく川幅が狭くなり、陽も当らない暗い感じになると、大きな丸いつるつるとした大岩達が現れた。この島は不思議だ。宇宙人による地球侵略の為の日本基地かもしれない。沢の大岩も山頂の蒲鉾岩もモアイ像のような積み木のような岩もどうして作られたのか想像を遥かに超えている。上から巨人が置いたとしか思えないのだ。そしてとにかく球の上を飛んで渡るのはとても怖い!しかもザックが私を後ろから引っ張っている。段々と恐怖心が足を竦ませて遅々として進めない。力技で引き上げてもらった回数、1.2.3….。すみません。私自身が重い荷物で…。突然大きな一枚岩の滝に突き当たり、急に沢が細く険しくなって遡行が難しくなり、沢から外れて尾根を目指す事になった。
ここからが今日の核心?
とにかく藪が大変だった。鹿のフンを眼下に匍匐前進を続ける。坂本さんの後なら楽かも?と思って着いていくも、力強く広げられたルートも手を離された途端閉じてしまう。仕掛けに捕らえられた魚のようにもがきながらやっと進む。やはり小柄な方が有利らしい。半袖の坂田さんは傷だらけだ。坂本さんと薔薇と石楠花に文句をつけている。私は長袖の上に雨具を着ていたので、穴は開いたが一応無事だった。藪こぎは話には聞いていたけど、初めての経験だった。比べる過去がないが、やはり屋久島の立派で元気な藪は普通の藪こぎより大変らしい。尾根に出た時の開放感は格別であった。
予定時刻をオーバーし、尾根に出たのが14時位。今夜は石塚小屋を目指す事になった。今回の山行は私には不安要素も強かったけれど、日程に余裕があることが、気分を楽にしていた。
そこからの登山道が素晴らしいものに思えるのも藪のお蔭?途中坂本さんは今回の山行一番の怪我を弁慶の泣き所に受けつつ、小屋に到着。石塚小屋は味も素っ気もないコンクリートブロック造だったが、1階のカップルと隣の単独者、2階は3人締めだ。快適!今夜の夕食のカレーを前にビールで乾杯する。至福の一瞬だ。

28日(土)晴れ 5:00起床
今日は九州の最高峰、宮之浦岳を目指す。登山道は素晴らしく整備されている。さすが世界遺産!?
昨日の疲れは大分取れていたが、ザックが最初より重く感じられる。沢靴やシュリンゲ等水分をたっぷり蓄えたもの達が重量を増しているようだ。
黒味岳へ:途中にザックをデポして、空身で目指す。山頂からは高盤岳の蒲鉾岩も宮之浦岳も一望に見渡せる。宮之浦、遠い…。
宮之浦岳手前で「休みたい!」と泣きを入れながらも、なんとか登頂。天気も良く、見晴らしは最高。山頂も多くの登山者で賑わっていた。単独の女の子と話をしたが、「トレッキングシューズを買って初めての登山なの~」と言っていた。可愛らしい人で、鵬翔にスカウトしたかったが、関西の人だったので断念。名残惜しみながら、予定の新高塚小屋を目指す。一気に高度を下げる。屋久鹿に出会いながら、小屋に2時頃到着。新高塚小屋は木造で、デッキが広く取られて開放的だ。時間が早いのでまだスペースに余裕があった。2階の奥に陣を取る。夏のような陽気に沢靴や濡れたものを干す。
縄文杉へ:これは私の希望である。ミーハー心で、どうしても観たい!と思っていた。永田に抜けるのには完全な寄り道になってしまうけれども、隊長の坂田さんが取り入れて下さった。ここからは、観光客~♪と勝手に決めて、のんびりと歩く。高度を下げると急に杉が増える。屋久島の杉は見たこともないような巨木で若い木も古い木も堂々と存在感を放っていて圧倒される。縄文杉は、他の杉とは一線を画すような古い木で、一見の価値有り!と思うけれど、観光スポット化されすぎていて、興醒めも否めない。あそこまでする必要があるのかしら?もっとさり気なくてもいいのになぁ。戻ると、小屋を取り囲んでテントがひしめき合っていて、既にどこも宴会モードだった。しかし不思議な事に小屋の中で宴会をしているパーティは私達だけだ。なんと7時には皆が寝てしまい、私達の笑い声が響いてしまう。まだ7時ですよ!早すぎませんか??うるさいと怒られた(ような気がした)ので、諦めて就寝。早く寝すぎて、何度も目が覚めたのは、私だけではありません。

29日(日)晴れ 5:00起床
周りがもう居ない!さすがに前夜7時に寝てるだけあって、皆朝が早い!5時には殆んどの人が出発していた。人が居なくなって、ゆっくりのびのび仕度を整え、坂田さん希望の永田岳へ向う。今日もいい天気。汗だくになりながら登る。風が気持ちいい。永田岳からは障子岳が鋭く尖っている様子が近くに見える。二人は次回の沢登計画を練っている。切り立っていて沢の筋も見えない程急峻な沢。どこからアプローチするのかもさっぱり分からない。あそこに登りたいと思うなんて、凄いなぁ…と思いながら、ぼーっとしているのが気持ちがいい。遠くに海が見える。街が見える。これからが長い。永田歩道は宿の人に散々辞めた方がいいとアドバイスされたルートだ。恐る恐る進む。
…そんなに悪路ではなかった。しかし長い。非常に長い。ゆるゆると登ったり下ったり。段々と体力が消耗されて、集中力がなくなり、転ぶ滑る。17時頃本日の下山を諦め、幕営地を探す事になった。地図上にある「第三休憩所」「第二休憩所」いずれも見当たらない。少し平な場所にテントを張ると、私はもう動きたくなかった。とりあえず、寝袋を出して睡眠をとり回復に努める。二人は水浴びに行ってしまった。坂田さんと坂本さんはどこでも水浴びをしている。ホント男の人は手軽でいいな~と羨ましく思う。寝袋に包まれてうとうとすると、元気になった。縦走最後の夜。持って来てもらった最後に残った屋久島の焼酎で乾杯。夜中は鹿の声がひっきりなしに聞こえていた。縄張りに変な物が。と怒っていたのかしら?宮之浦歩道の鹿は人慣れしていて人間を構わないが、この辺りの鹿は警戒心が強いらしい。

30日(月)晴れ 4:00起床
最終日。わずかな下山が残っているだけだ。地面は腐った落ち葉でフカフカして歩きやすい。膝に優しい道だ。
結局永田歩道で出会ったのは単独の男性だけだ。ゴールデンウィークもここでは全く感じられない。屋久島の原生林が残る永田歩道は、淀川付近とも宮之浦歩道とも違う趣をしている。屋久島の道は通るルートで全く違う雰囲気に感じられて楽しいので何度も訪れたいと思う。
「河流にはヒルが居るよ。駐在さんがやられたらしい」との情報だったが、会わずに通過。巨大なシダ類をみつつ、車道に出て7時頃登山終了。そこから1時間位で海に出た。山から海へ。澄んだ海の水は沢の水を思わせる透明度。天気は最高。8時頃にはぐんぐん気温を上げていた。しかし海の水は私には冷たい。「暖かいよ!」と登山の格好のまま海に飛び込む二人に呆れつつ、楽しそうに泳ぐ姿がリゾート気分でなんだかとっても嬉しくなった。
楽しかった。美しかった。無事に帰れた。それだけで、充分。
今回もやはり歩くのが遅い、飛べない、持久力がない、、、と反省点は尽きないけれど、また、頑張ろうと思えるパワーをくれた坂田さん坂本さんお二人と屋久島に感謝です。(記 志村)

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