中央道を長野方面に向かうと、右手に八ヶ岳連峰、左手に南アルプスの雄峰が望める。
ひときわ目立つ甲斐駒ケ岳の北方に続く顕著な稜線が鋸岳だ。
2月半ば、坂田さんと戸台まで車で入る。予想に反して積雪は全く無い。
戸台の谷を東に向かい途中から角兵衛沢を詰める。角兵衛沢がガレ沢になるまで積雪は無し。道が一部凍結しているのみで4月のような状況だ。
岩峰に挟まれた狭く急な沢を登る。沢を埋める落石は小ぶりで不安定、大変崩れ易い。岩が割れたときの硝煙の匂いが立ち込める。
斜面に残る雪に足を蹴り込みながら登る。傾斜がきつく、恐怖感も抜群、時折落石の音がする。
斜面から振り向くと谷を挟んでスーパー林道の白いラインが山腹に走っている。時間が掛かる割になかなか高度が稼げない。
日に焼かれながら稜線直下まで登り、テントを張る。始終好天、風も鋸にしては大変弱い。
夕飯、朝飯を二人で分担して調達していた。開けてみれば二人ともカレーである。なんというセンスだろう。
翌朝周囲が明るくなってから出発。昨日に引き続き風が弱く、テント撤収もさほど苦労せず。40分程登り、第1岩峰に立つ。
甲斐駒へ続くシャープな稜線、峻険な北岳、雄大な仙丈、白い中央アルプス山脈、御岳山、北アルプスの峰々、志賀の辺り、上越、浅間、八ヶ岳連峰、奥多摩山塊、大菩薩、丹沢…富士山は見えなかった。
小ギャップへ懸垂降下、再度登り返して鹿の窓と呼ばれる変わった自然の造形を通過、再度登高後、大ギャップへ懸垂降下する。強風の吹きぬけるギャップの中で小休止後、南側へ沢を少し降りて今度は第2高点へ登り返す。
山頂は剱が祭ってある。強風に吹かれながら、久しぶりにまともなものを口にする。第1岩峰より数時間、ほぼ休憩無し。
中ノ川乗越へは硬い雪面をバックステップで降りた。途中までは立ち木も無く100m程休み無し無しで降りる事となる。足がつりそうだ。
傾斜が緩やかになった辺りから立木を支点に懸垂降下で降りる。雪はしまっているが、クラックが走っている。コンディションによっては雪崩れるだろう。
中ノ川乗越から熊穴沢を下る。昨日の角兵衛沢に比べて岩が大きく、傾斜もそれほどきつくない。アイゼンを軋ませながら下る。途中からは雪面、雪崩もあまり気にせず雪面を駆け下る。
高度を下げると雪面も消え、晩秋の山歩きのような塩梅になる。但し道は全面凍結していてよく転ぶ(後藤:4回、坂田:1回以上)。
熊穴沢出合からは15分程で昨日の角兵衛沢出合に着く。平地の移動の何と速いことか。闇夜を歩いて車に着いたのは19時、計画より2時間ほど遅れて到着。
今回は2月にしては異例の少雪だった。天候も快晴、微風続きであった。
山行が成功したのはコンディションが良かったからに過ぎない。
しかし眺望は最高だった。
以上、鋸岳より愛を込めて。
以下に行程時間を示す。
2/17
11:00新宿発
2/18
1:00道の駅着 仮眠
5:30発
6:30戸台川原(駐車場)着
7:40第二堤
8:30角兵衛沢出合
9:45ガレ沢最下部
10:30岩峰下
12:00ガレ沢中腹
13:30ガレ沢上部
15:00稜線直下
2/19
5:30起床
7:10出発
7:40第1高点
13:05第2高点
15:30中ノ川乗越直下
17:15熊穴沢出合
17:30角兵衛沢出合
19:05戸台川原(駐車場)着
2006/02/22 67期 後藤 記