2013剣岳

日程: 2013年6月9日(日) – 10日(月) 前夜発
山域: 剣岳(北アルプス)
参加者: 土井
行程:
第1日目: 新宿バスターミナル(23:10 高速バス) – 扇沢(4:45/7:30 仮眠) – 室堂(9:45/10:15)-別山乗越(12:45) – 剣御前(14:00) – 剣御前小屋
第2日目: 起床(2:50) – 出発(4:13) – 長次郎谷出合(5:15) – 熊の岩(7:30) – 長次郎のコル(8:10/8:20) – 剣岳(9:00/9:20) -平蔵のコル(10:00) – 平蔵谷出合(10:30) – 別山乗越(13:15/14:20) – 室堂(15:35)

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人っ子一人いない剣岳に立った。風に負けないぐらい、自分の鼓動が荒く音を立てている。長次郎谷から最後の登りがミックスクライミングだったため、まだ胸がバクバクしているのだ。「興奮さめやらぬ」というやつかもしれない。


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高さにしたら100メートルもない普通の登りだと思う。6年前の5月に登った時は、雪の斜面をサクサク登ったという記憶しかない。それだけ印象の薄い場所だ。「今回も何とかなるさ」と高をくくっていただけに、コルから見上げた岩場に微妙に雪が張りついている光景は、嫌らしかった。

今日中に室堂に戻って帰京しないと、仕事に穴を開けてしまう。悠長に眺めている余裕なんてない。

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「さあ、登ろう」と意気込んだのに、いきなりコルと岩場をつなぐ雪を踏み抜いてしまった。柔らかい雪が張りついているだけ、という印象は間違っていなかった。気を取り直して再スタートだ。アイゼンをガリガリ軋ませながら、慎重に登る。長次郎雪渓が股の間から見えて高度感が素晴らしい。怖いのが2割、ワクワク感が8割。「このために、登ってきたんだから楽しまないといかん」と自分に言い聞かせる。

実は一か所、迷った。左の雪壁を登るべきか、右に逃げるべきか。雪壁には踏み跡があったので少し登ってみると雪はシャリシャリと腐っていて、ピッケルもすぐに抜けてしまうほど。う~ん、滑ったら「どんぐりコロコロ、雪渓までコロコロ」と、シャレにならない。

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そこで右手に移動して登ってみた。最初こそ快適に登れたが、カンテ状で行き詰まる。正確に表現すると、「次のホールドが見えない」「アイゼン前歯で踏み込む勇気がない」という情けなさ。迷うこと数分、腐った雪の上を登るのと天秤にかけ、結論は「このまま登る」。えいやっ!と這い上がったら何とかなりました。やれやれ…。

頂上には午前9時着。午前2時50分起床だったので、このまま一眠りしたい気分だ。ザックを下して休んでいると、足元の雪面を小さいクモがカサカサと横切った。その先には、カワゲラのようなユキムシがゆっくり移動中だ。「クモに食べられてしまうよ」と警告したが、もちろん言葉は通じない。天敵が接近しているというのに、どうもノンビリ屋さんのようだ。食物連鎖を邪魔するようで申し訳ないが、クモの進路をブーツで阻んでみた。すると、奴さんは方向転換して西に進路を変更。カワゲラに貸し一つ!

さて、こんなバカなことを、いつまでもやっているわけにはいかない。何たって今日のゴールは室堂なので、気が気ではない。腰を上げると、源次郎尾根の右手に雪のルンゼが伸びていた。平蔵のコルまでの積雪期の巻き道だろう。踏み跡もある。

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トレースを追ってみたが、かなり急な斜面。しかも、ルンゼは右へとカーブして、行く先が見えない。「さっきは一か八かうまくいったけど、無理は禁物」という心の声が聞こえてくる。頂上まで戻ることにした。

平蔵のコルまでは夏道が出ていたのでアイゼンを外した。平蔵谷はビニール袋を使ってシリセード。登りに3時間近くかかったのに、下りは30分。あっけないものだ。

ここから剣沢の登り返しが辛かった。テント場にはホースが通してあり、冷たい水が飲み放題。それだけを目標にして頑張る。さらに、剣御前小屋でオレンジジュースを1本消化。室堂ターミナル15時30分のトロリーバスはタッチの差で逃したが、45分発という臨時便?に乗ることができた。

仕事の関係で前夜発1泊2日となったが、無理が効かない年齢だと痛感した。次は2泊3日、ゆっくり楽しみたい。

【反省】テントポール1本を忘れるという失敗をやらかした。扇沢で仮眠した際に気づいたのだが、ああ手遅れ。ザックに詰めてきた幕営装備が泣いていた。結果として山小屋に泊まってみたが、その禁断の快適さに衝撃を受けた。何年ぶりだろう、山中で布団にくるまって寝るなんて…。

(記: 土井)

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