日程:2017年3月18日(土)-21日(土)
山域:北アルプス 穂高
参加者:国府谷 五十島
ずっと前からあたためて、あたためすぎて融けてしてしまうくらい念願だった積雪期の北尾根に行きました。
結果的に、天候、トレース、パートナーに恵まれまくりでした。いちおうレポート。
時期は春分の日からみの連休と決めていた。それに1日お休みを足して4日間。
毎年そうなるわけではないので今年はチャンスだと以前から思っていた。
あとは、パートナーである。年々衰える力を補ってくれる強力なパートナーが必要となる。
そういう意味でも今年はまたとないチャンスだった。
自分の体調的にも大丈夫そうな感じになってきたので1月頃からそれとなく計画を話してなんとなく
同意を取り付けた(つもり)。
行程は、北尾根~前穂~奥穂~新穂高とした。積雪期の涸沢岳西尾根に行ってみたかったので
新穂高から沢渡に停めてある車までもどるのは遠回りになるが、奥穂も行けるしいいかと思って決めた。
食糧は五十島さんに任せて軽量化に努めた。でもひもじい思いはしない程度には食べさせてもらった。
3月17日
いつもより気持ち早めに新宿を出発。天気予報はまずまずということなので気分は明るい。
順調に沢渡に着いて仮眠。
3月18日 晴れのち曇りのち雪
沢渡で客待ちしているタクシーに乗って中の湯まで。トンネル入り口には中千丈沢にいくのであろう
人々が沢山いた。
上高地、明神を過ぎて徳沢。しっかりしたトレースがあるのであまり潜ることもなく苦労しなかった。
さてここからはずっとラッセルだよなー、と思っていると新村橋を過ぎてもトレースがある。
それもワカンでの新しいトレースだった。
どこまで続くのかと奥又白の右岸についているトレースを辿っていると、どうやら北尾根に向かうもののようだ。なんとそのままドンピシャで慶応尾根の取り付き付近のコルに上がっていた。
この先8峰までこのトレースのライン取りが絶妙なだけにかなり体力、時間をセーブ出来てしまった。
まともにラッセルしていたらどこまで来られたかわからないが、結局先行Pのトレースは8峰まで続いていた。彼らは今日8峰の先で幕。我々は8峰手前くらいのシュルンドの隙間に幕。
夕食は美味しい鶏鍋。初めて使うジェットボイルはテントの中は寒いけど、熱効率が良く燃料の使用量がとても少ない。
3月19日 雪
昨晩は斜めになっているテントが雪に押されて ずり下がってきたのを直したりいろいろあった。
6時には出発したかったのだが、まだ雪が続いているので、明るくなった7時頃に遅らせた。
予定では3,4のコルまでだが、できればもっと進んでおきたいところ。
先行の3人Pにはすぐに追いつき、先に行かせてもらう。
弱い降雪は続いているが、ルートファインディングできる程度には視界はある。
ロープを出そうかどうか、という場面は何度もあったが五十島さんが上手くルート取りしてくれて行程が非常に捗った。
結局、13時前に3,4のコルに到着。このまま進むか迷ったが、この天候で3峰を登るのはしんどいので
ここに泊まることにした。
昨晩は寝心地が良くなかったので入念に整地しておく。しかし、風を避けるため3峰側の斜面に近すぎた為
降った雪がテントに吹きだまりになってしまったのは失敗だったかも知れない。
夕食はハンバーグ。3人Pは暗くなった18時半頃に到着した。
3月20日 晴れのち曇り
この日の予定は白出のコルまで。天候は下り坂で明日は荒れそうとのこと。
時間は掛かるだろうけど、山荘の冬季小屋を使わせてもらえるとすれば日没までに着けばいい計算である。
朝イチで今回の核心の3峰の登り。通常ルートのチムニー状の部分より少し右の残置ベタ打ちのラインから登る。
2P目は右に回り込んでから雪壁を直上。3P目はクラック状を岩登り。ここまでをお願いしてリードさせてもらう。
4P目は雪の斜面を登り、さらに少し歩いて4,5m程を懸垂下降。ここでロープを畳んで山頂まで歩き。10:40頃登頂。ともかく3峰の登りで晴れていてくれて良かった。
吊尾根へ最初の下りは尾根通しではなくて、紀美子平方面に雪壁を降りてからトラバースして尾根に戻る。
しかし、このトラバースからしてラッセルが深い。ところどころで腿くらい潜る。吊尾根では締まった
雪の斜面を期待していたが結局最後までこの状態だった。
ラッセルは、もちろん五十島さんがしてくれるのだが、やはり余分に時間が掛かってしまう。
尾根通しに行けない部分がでてくる時は左側に回り込むようにトラバースして進む。
全く気が抜けない。だんだん天候がくずれてきて強風が吹きつけてきた。
南稜の頭が近くなってもペースは上がらず、奥穂への緩い登りもへとへとだった。
山頂で写真を撮る余裕もなかった。残念。
白出のコルへの下りで道標を支点に懸垂下降1回。その後は夏道のペンキに従ってコルに降りた。
ギリギリヘッドランプは出さないで済んだ。五十島さんが見つけてくれた、かろうじて残っていた冬季小屋への入口に足から滑り下りるように潜っていくと、そこは天国のようだった。
五十島さんが後から水作り用の雪を袋に入れて来てくれる。とりあえず温かいものを飲んで落ち着くことにする。
五十島さんがせっせと水作りに励んでいる間に、ともかく広いので しばらく横になって休んでしまう。
夕食はカレー。疲れているときにも食べやすいのが良い。
引き続き水作りをした後、すでにぺちゃんこのシュラフに入って寝る。替えの靴下があって助かった。
3月21日 吹雪
最終日は涸沢岳西尾根を下るだけ。天気は良くないが、気にならない。
外は吹雪だけどテントの撤収もないから楽ちん。クランポン付けたらすぐ出発。
涸沢岳まではすぐ到着。視界があまり無いので方向を よく確認して西尾根を下降する。
雪庇と途中から南側に分かれる尾根に気を付ければ問題ない。ところどころに旗竿も立っている。
(といっても1回くらいは間違える)
林道に降りても今年は積雪が多いようだ。お昼過ぎに新穂高に着いても雪は降り続けていた。
平湯までのバスは1時間に1本。平湯で松本行に乗り換えて無事沢渡へ到着。
塩尻のスーパー銭湯で入浴と食事を済ませて帰宅した。
のこり少ないクライミング人生で今回北尾根に行けたのは率直に嬉しい。
あとは、あそことあそこに
行けたら思い残すことは無いです。
(記:国府谷)