日時: 2008年4月26日(土) – 27日(日) 前夜発
山域: 白根山(北関東)
参加者: 松林(L)・志村・殿塚
行程:
第1日目: 菅沼登山口出発(8:00) – 座禅山 – 山頂付近(15:30)
第2日目: 起床(5:00) – 出発(6:40) – 前白根山 – 五色山 – 金精山 – 終了(15:30)
松林さんから奥白根に行くと聞いて、行きたいと思った。冬登山の本に載っていたので、行ってみたい山としてインプットされていたのだ。今回は春山ハイキングみたいなものだよ~。楽々だよ~と言われて、楽しみにしていた。その時は、この登山の顛末を予想すらしていなかった。
前夜22:30荻窪駅より松林車で出発。翌2:00頃登山口の駐車場で殿塚さんの車の横に停め仮眠。
殿塚さんとは初めての登山だ。
曇ってどんよりしている。しかし予報では回復するはずなので、希望を持って出発する。軽装の団体が居るが、どこに行くのだろう?
出発してすぐに、落石が多い谷に出る。この山では冬はどこでも登られる。我らも登山道ではなく谷筋にルートをとった。バラバラと石が落ちてくる。私はドッチボールが嫌いな子供だった。避けた方に球が来て当たるのだ。落ちてくる石をどちらに避けていいのか分からず立ちすくんでしまったが、間近に迫ってから、避ける事が出来て、ほっとする。こんな危険な場所はとっとと通過すべし。
「雪が腐っている」初めて使う言葉だ。常々、雪は腐るのか?と心の中で疑問に思っていたが、まさに新鮮さから程遠い古く腐った状態とはこの事なのであろう。登るのに腹が立った。トップを3人で交代しながら、なんとか尾根に到達。五色沼方面に迷い込まないように右へ右へと意識して進んだ結果、左に弥陀ヶ池が見える筈が座禅山の火口が見えていた。強風が吹き、雪が顔に当たって痛い。視界もない。しかし座禅山山頂付近でぱーっとガスが晴れて、現在地が判明した。
白根山に向けて、ルートを修正する。
とにかく足を取られながら精神を消耗し、歩ける場所を探し、進む。白根山のバリエーションだ。登山者が大勢居るかと思ったら、誰も居なかった…。登頂経験がある両氏もあまりの視界のなさと状況の悪さに山頂がどこにあるか、定かではない。「もうここでいいのでは?」と提案してみる。この時点で山頂に向かったとしても、視界がなければここでもどこでも変わりなし!翌朝、天候が回復したら山頂に立てばいいじゃない。
適当に整地して、テントを張って、中でお湯を沸かして、ようやく一息つく。その間、風避けの壁を築いて下さった松林さん、有難うございます。元々春山トレッキングのつもりの私は、思わぬ寒さに参ってしまった。一応防寒グッズはあるのだけど、面倒くさがって出さずに来てしまったのだ。
私が用意した、サトウのご飯とレトルト牛丼で簡単に夕飯を食べて美味しいおつまみとお酒で温まって、恐る恐る外に出たが、外はそんなに寒くなかった。
風は一晩中吹き荒れたが、疲れていたので良く眠れた。…筈だったのだが、起きたら頭痛が酷く食欲が全くなかった。食当の責任として、素麺を茹でたりするが、見ているだけで気持ちが悪い。山でこんな状態は二日酔い以外では初めてだ。松林さんに強く勧められ、やっとの事でスープと甘くしたコーヒーを流し込んだ。動き始めれば治ると思うが、不安になる。GW山行のトレーニングも兼ねた今回の登山でこんな失態とは…。大丈夫だろうか?「今日の行程は楽ですよね?」と再確認する。「もし辛いなら前白根に行かないで下山する?今日は、楽だよ。下山だけだから。11時には下山して16時頃東京に戻れたらいいね~」との事なので、計画通りに進むことにする。
雪は止み、風も弱まっていたので撤収は容易に終わった。カチカチに凍ったアイゼンを苦労して取り付ける。山頂ではやはり視界がなく、残念だ。しかし、見事な『エビの尻尾』が見られた!わぁ~いわぁ~いと言いながら叩き落したりして1人遊ぶ。
しかし、ちょっと下り始めた頃明るくなってきた。段々天気は回復し、太陽まで見え隠れしている。視界さえあれば迷う事はないが、山頂付近は本当に迷いやすく危険だと思った。
正面に前白根を含む山々が壁のようにたちはだかっている。急斜面を慎重に下りると明るい日差しと真っ白に凍った樹木が眩しく輝く場所に出た。これこれ!私がイメージしていた春山トレッキングはこんな素敵な場所の事。とウキウキする。
この時点で頭痛は残っているものの、気分の悪さはとれていた。
樹氷がバラバラ落ちてきて、我らを襲撃する。痛い。
避難小屋で休憩し、前白根へ向かう。初めて他の登山者にあった。彼らは軽装で、白根山には行かないとの事。
登ったり下ったりしていると天気も目まぐるしく変わる。晴れたり曇ったり。誰も居ない。トレースは鹿のものと数日前であろう名残だけ。しかも、途中で消えてしまった。松林さんが地図とコンパスを見ながら導いてくれる。
下りでアイゼンを外したら滑って立ち木に激突したので、また装着する。
最後の金精山で記念写真を撮り、本当にもう下山だけになった。
…ここからが核心部だった。
急斜面の下降、トラバース、足元は悪く思いっきり蹴ったら今にも崩れそうだ。崩れたら、落ちるしかない。「怖い~行けません~」と言っても仕方ないと思いつつ声に出して恐怖を追い払う。行くしかないのだ。もう戻れないのだから。お二人にステップを切って貰って、恐る恐る下降を続ける。泣き言を言いつつ、歩く。嵌る。転ぶ。果てしなく消耗していく。人気の山のはずだが、全く登山者に会わないとは、この時期のこの山が大変だと知られているのだろうか?ずっぽり雪に捉えられた殿塚さんをスコップで掘り出したり、容易には抜け出せない。アスファルト道路がこんなに恋しかったのも珍しい。幻覚まで見つつ、ようやく道路に出た時の感動ったら!普段、膝が痛くなるアスファルトに珍しく感謝しつつ、この山行も終えたのでした。
前日の風や雪が嘘のような春の天気。駐車場で、反対方面に帰る殿塚さんと別れ、白根温泉につかり十割そばを食べ、帰京。
松林さん、ナイスな計画でした。精神修行になって、この次の週の登山はお陰様で楽に感じました。最後の冬山と最初の春山を同時に堪能出来た白根山、絶対忘れないだろう。お二人共有難うございました。
(記: 志村)