日時: 2012年9月22日(土) – 23日(日)
参加者: 久世(L)・松林・廣岡
山域: 奥穂高岳コブ尾根(北アルプス)
行程:
第1日目: 沢渡 – 上高地 – 岳沢小屋 – コブ沢 – コブ尾根上=幕営
第2日目: 幕営地 – コブ – コブ尾根の頭 – 天狗のコル – 岳沢小屋 – 上高地 – 沢渡
写真は(こちら)
今年の春に年間予定を考えた時に、秋に皆で穂高屏風岩に行きたいと思い、その旨総会時に年間計画を発表しました。その後、松林さん・廣岡さんから参加するとは言われていたものの、春・夏の週末は雨が多かったり、都合が合わなかったりで、なかなか皆で人工登攀の練習が出来ず、8月26日に三ツ峠でようやく一回練習出来ただけでした。その際、松林さん・廣岡さんには、初めてアブミをトライするにも関わらず、ちょっと初回では難しいルートにて練習したので、苦労させてしまい、その時の嫌なイメージが残ってしまった。
その為、屏風岩を登るには、3連休で初日入山、横尾で幕営、2日目登攀、3日目下山にて予定を考えましたが、久世の都合で、3連休での登攀が無理となり、結果屏風岩を断念せざるを得ませんでした。急遽、穂高周辺で、土日にて登れる良いルートをと思い探した所、コブ尾根が適当と思え、さらに時間があれば飛騨尾根も登攀するという欲張りな計画を考えて、でも充分こなせるプランだと思いました。登山を始めてしばらく経ちますが、実は一度も岳沢に行った事がなく、こういう機会を逃すと次はないと思い、半ば強引に松林さん・廣岡さんに了解を貰いました。
コブ尾根は岳沢からコブ沢を詰め、途中のルンゼから取り付き、尾根上に出て、核心のコブと呼ばれる岩峯を越えるルートで、最後は西穂から奥穂の稜線のジャンダルムの隣の「コブ尾根の頭」に突き上げるルートです。
9月21日の夜に、調布で松林さん・廣岡さんと合流、松林車で一路、沢渡を目指す。2時過ぎに沢渡に着き、仮眠をして、朝6時のバスに乗り、6時30分上高地着、計画書を提出したりして6時45分上高地を出発する。
朝から天気も良く、初めて河童橋を渡った対岸の場所を歩く。橋を渡ったお土産屋で、廣岡さんが防寒の為に、手袋を購入するが、土産用なのでとても笑える柄の手袋で、どうもそれが可笑しくて、林道の記憶が薄いうちに、岳沢への登山道の入り口となる。樹林帯の中を1ピッチ登ると、見晴らしの良い所に出て、コブ尾根やコブ沢が良く見えるが、コブ沢筋にズタズタな感じの雪が残っていて、ちょっと不安になる。もう1ピッチ登り、8時45分に岳沢小屋に到着する。小屋は数年前に雪崩で崩壊した為か、簡易な感じのする建物であった。しかしながら景色がとても素晴らしく、今まで知らなかったのが勿体なく思え、今回来ることが出来良かったと思った。
登攀道具を身に着けていると、他にも2パーティ程バリエーションに行く様な人達がいるので、9時15分急いで、岳沢小屋を出発する。天狗のコルに向かう登山道を行くと、小屋からすぐでコブ沢と出合う。コブ沢へ入るが広いガレ沢で、非常に登りづらい、さらに下から案の定2パーティが、コブ沢を登ってくる。大きな2つの雪のブロックがあり、登り方を下見していると、後から来た男女の2人組に追いつかれてしまった。この2人組はこの日に日帰りで、コブ尾根を登ってしまうらしく軽量な為、先を譲る。まず最初の大きなブロックは、左岸から登り難なくクリア出来たが、二つ目の雪のブロックは、ブロックの下を通過して対岸に渡るのがルートで、慎重に1人1人越えていく。後ろから来ていたもう一組は、二つ目の雪のブロックの処で、引き返していった。その後、涸滝を右岸から2-3つ越えると、右からルンゼが入ってきて、これがコブ尾根の取り付きである。もう少し手前に、岩場があり、シュリンゲの垂れ下がった支点を確認したが、こちらが正規の取り付きとの紹介もあるが、我々の行ったルートの方が楽だと思われます。
ルンゼはガレてはいるが、特に難しい所も無く、登るごとに景色も良くなり、天気も晴れ渡り気持ちが良い。しかしながら前夜の仮眠が短かった為か、なかなかピッチが上がらない。ルンゼから草付帯に変わると、コブ尾根の稜線に這い上がり、しかもそこがコブ尾根上唯一のテントサイトである。時間は12時15分で早いが、疲労もあるので、ここで幕営とする。しかしこの幕営地はリッジ上の所にあり、我々が登ってきた方も急な草付帯であるが、反対側は完全に切れ落ちた崖で、油断したら50M下の谷底である。テントの設営・撤収等、今回の山行で一番緊張した所でした。ただ景色は最高で、見下ろせば上高地が望まれ、今日登ったところも振り返れて、見上げれば西穂の頂上や、前穂から明神岳までの稜線が晴れ渡り、吊尾根を歩く人々も指呼の距離に見ることが出来ました。
昼寝をしたり、ゆっくり寛いでいたら、奥穂南稜を登攀するパーティを望む事が出来、彼らは3-4人のパーティで、結局日没の頃まで、そのまま登攀を続けていた。(この差が我々とは、翌日大きな違いとなるのだが、その時は知る由もない)我々は早めに食事を摂り、前夜発の疲れもあったので、さっさと就寝する。
しかし朝3時の起床前あたりから、テントを叩く嫌な音が聞こえてきて、雨がポツポツと降ってきた。起きてテントから外に出ると、昨日とはうって変わり、一面雨とガスの中で、全く景色が見えない。昨晩の天気予報では崩れても遅い時間からだったはずだったが・・・、朝食を摂り準備をして、暫く待つが状況は変わらない。登るか?下るか?しかないが、下るためには草付帯を降りる事となり、危険で不可能であり、次第に雨も小降りとなり、明るくなってきたので、6時過ぎに登り始める事とする。
まずテントを横の崖に注意しながら慎重に撤収し、すぐ目の前のハイ松帯の急登となる。雨の為、非常に寒いがハイ松自体は安定しているので、ホールド的には安心だが、雨に濡れて手袋をしていても滑り易い。テント場のすぐ上のマイナーピークに着くと、懸垂下降となる。晴れていればクライムダウンで行けるのだが、岩が濡れている上、朝一番で体も暖まっていないので、無理をせずロープを出す。更にハイ松帯からルンゼを登ると、目の前に「コブ」が見えてくる、ガスっているからなのか、意外に大きく感じてしまった。
基部にてクライミングシューズに履き替えていると、一段と雨が強くなってきて、指先が完全に悴んでしまい、感覚が無くなりかけている。久世トップで登るが、正面リッジ状の左手を登るのが正規ルートらしいが、思い切り間違え、リッジ状の右側を登ってしまう。トラバース気味に右上部に回り込む所で、寒さで完全に握力が無くなった為、一旦荷物をその場にデポし、空身で登る。もう少しロープを伸ばし、「ビレー解除」のコールを、松林さん・廣岡さんに届け、併せて荷物の回収の件も依頼するが、しかしながら荷物回収が予想外にてこずる事となる。
ダブルロープの1本を荷物回収用にして、荷物を引上げ始めたら始めたら、回収直前のところで、張り出した岩に引っ掛かり、その岩が崩落寸前となってしまったため、先に松林さんと廣岡さんに岩を避けれる所まで登ってもらい、最後に荷物を持ち上げると同時に、岩が谷底まで転がり落ちて、やっと荷物の回収終了となった次第である。かなりの時間のロスと、体が芯から冷えてしまった。その時、南稜を望むと、昨日のパーティが登攀を終え、吊尾根に到着しているのが見え、先に安全地帯に行った彼らを羨ましく思えた。
もう1ピッチロープを伸ばし、コブのピークに立つと懸垂下降が待っていた。一番手前の古いシュリンゲの多い支点より下るが、上から見るほど高低差はない。ただ降りた所は、ガラガラのガレ場で雨のためか陰鬱な感じだ。全員が下降を終え、もろい岩場を登ると、傾斜が緩くなる。草付と岩場のミックス帯なのだが、雨が降っている為、慎重に登る。しばらく登るとヒョイといった感じで、コブ尾根の頭に飛び出た。時間は午後1時20分、思った以上に遅くなってしまった。しかしコブ尾根の頭に着いたと同時に雨が止み、奥穂頂上・ジャンダルム・時間が許せば行きたかった飛騨尾根が目の前に広がり、達成感が込み上げてきた。
ただこれで終わりではなく、上高地まで下らなければならず、時間も遅くなったので、登攀用具を片付けると、ほとんど休まず出発、縦走路を天狗のコルへ向かう。この縦走路も決して楽な路ではないが、急ぎ気味で進み、午後2時45分天狗のコル着。5分の休憩の後、落石の巣の天狗沢を下降する。特に最上部は、本当に動けばほぼ間違いなく、落石を引き起こすので、一人ずつの下降となり、時間がかかってしまう。ただ白いペンキのマークがしっかり有り、迷う事はない。すごいガレ場とはいえ、整備してあり、登山道を守っている人の労苦を考えると、頭が下がる思いであり、文句は言えない。とはいえ、やはり時間はかかり、午後4時25分岳沢小屋に到着、また5分の休憩で出発。
上高地からの最終バスは、午後6時なので、何とかこれには間に合いたい。なぜならば上高地に来る時に、沢渡でバスの往復チケットを買ってしまったからである。しかしながら雨に濡れたザックが重くなった為か、疲労なのかピッチが上がらない。樹林帯では日没との競争、林道に出てからは本当に走りに走り、河童橋もダッシュで通過、6時のチャイムと同時に、ギリギリでバスターミナルに到着。滑り込みセーフでバスに乗れ、沢渡まで戻る事が出来た。今日一日、松林さん・廣岡さんは良く頑張ってくれました。沢渡の日帰り浴場にて汗を流し、心配していた中央高速も渋滞がなく、電車のある時間に、調布まで戻る事が出来ました。
今回は簡単な岩場でしたが、秋の雨と寒さの怖さを、改めて考える事が出来ました。
松林さん、廣岡さんお疲れ様でした。
(記: 久世)