all Path Crossingボールパス・クロッシング

2004/3/29(月)~30(火)

単独:掛川義孝

マウント・クック国立公園に前日到着し、テントサイトに駐車して車の中で一夜過ごす。周囲に氷河を抱いた山々に囲まれたマウント・クック村からはクックが良く見えた。翌朝29日晴れ。朝8:30にDOCに行き、ガイドブックに紹介されていた、キャロラインハットの宿泊を予約しようとしたら、そこはアルパインレクリエーションという会社が所有している施設なので、その会社のガイド付のツアーに参加しないと泊まれないと言われた。代わりにDOCの人からテントを張れる場所を教えてもらう。それでガイドブックに紹介されていたコースとは逆のルートで行く事になった。今回のルートはアイゼン、ピッケルが必要で、靴も僕のトレッキングシューズではアイゼンが装着できないのでプラスチックブーツが必要だった。クック村にある、アルパインガイドというガイド会社でアイゼンとプラブーツをレンタルした。一日アイゼンが8ドル(560円)、ブーツが12ドル(840円)で2日間借りることにした。ピッケルは中古のアイスアックスがストラップ付で120ドル(8400円)で売られていたので、ちょっと気持ち悪い気も一瞬したが安いので、買ってしまう。アルパインガイドの中庭に車を置かせてもらい、10時に出発する。天気はよく、フッカー氷河に向かうトラックには日本人観光客が多かった。年配の人や若い女の子と時々短い会話をしながらのどかなハイキングを楽しむ。途中にマウント・クック国立公園で亡くなった人達の慰霊碑が、クックを正面に望む高台にあった。50メートルぐらいの長さのつり橋を渡る。川は上流の氷河から灰色に濁ってごうごうと流れていた。2番目のつり橋のところでフッカーヴァレートラックをはずれて、橋を渡らずに川沿いに進む。狭くてあまり足場が良くない川沿いの崖をしばらく行き、右手の山が崩壊

した岩雪崩の上を歩いていく。最初は時々ケルンを見かけたが、そのうちルートがわからなくなった。とりあえず、歩きやすい道を探して進む。傾斜の急な斜面もあり気が抜けなかった。対岸の氷河湖で遊ぶハイカーが小さく見えるので、ずいぶん離れているんだなと判る。氷河湖を過ぎた、広い扇状地が今日のキャンプサイトだ。対岸にはフッカー小屋がある。ガイドには3~4時間とあったが、ガレ場の通過に時間を食って3:45に着く。6時間もかかった。明日は予定では10時間行動であるが、このペースだと12時間ぐらいかかるかなとすこし心配になる。ルートがいまひとつ確信がもてなかったので、明日登ると思われるガリーの下見に出掛けた。ガリーは上部で左に屈折しており、先が見えなかった。できれば屈折点まで登り、上部にぬけられるかどうか確かめたかった。ガリーはガレ場の急斜面で、足元が崩れて歩きにくかった。100メートルぐらい登ったら、顕著な踏み跡を見つけ、ルートに確信が持てたので、引き返す。夕方マウント・クックが夕焼けに染まる様子を楽しんだ。キャンプサイトのすぐ下は氷河があり、こんなに近くで見るのは初めてである。夜は月がクックの左肩に昇っていた。

3月30日

晴れ。8:15出発。ガリーの上部にはスノーブロックが残っていた。周りの岩にはつららが垂れ下がっている。2時間程でガリーを抜ける。そこにはMt Mabelの直下のPlaying Fieldという台地がある。何か話し声が聞こえると思ったら、右の上の方に二人組の登山者を見つけた。DOCではこの一帯は貴重なもろい植生なのでテントを張らないでと言われたのだが、彼らはここに幕営したのだろう。とにかく、他に登山者がいるのは心強い。ルートファインディングにも苦労しなくてすむかと思った。ここからは大きなZの字を描くようにして上部に行き、それから山腹をトラバースしてボールパスに向かう。彼らのいた所に着いた時は既に彼らの姿は遠く、ボールパスへの登りに差し掛かっていた。そこにたどり着くまでのルートファインディングに少々てこずりながらもボールパスの上り口に着いた。ここからボールパスまで500メートルぐらいは硬くクラストした雪面を行くので、ここからアイゼンをつける。右の露岩沿いに登って行く。アイゼンがよく効いたが、滑落したら下の氷河まで1000メートル以上落ちていくので緊張する。13:00ボールパスに着く。風もなく、いい天気だ。だがのんびり景色を楽しむ余裕はなく、急いで下山する。クックの真下にはキャロライン氷河があり、時々ごーという音がして雪崩が落ちていった。大体11時頃から頻繁に雪崩れるようだった。遠くから見るとたいした量の雪崩でもない割りに音が大きいのは周りの岩壁に反響するせいだろうか。15:00キャロラインハット着。この先で10人ぐらいの団体の登山者に会う。先頭の人がアジア人だったので日本語で話しかけたらやっぱり日本人だった。彼らはクライストチャーチでアウトドアのことを学ぶ専門学校に通っている人たちだった。その後に今度はガイド付の登山者のグループに会う。ガイドの女性と色々話が出来て、クックに詳しいガイドの名前を教えてもらう。そこからボール小屋までは尾根沿いに下っていき、18:00に着く。先に歩いていた二人組の登山者がいた。彼らのルートファインディングはうまくて、安全なところを選んでいたので、きっと経験者かガイドだろうと思っていたのだが、リードしていた女性はアウトドアのガイドをしている人だったので、納得した。本当はここで一夜過ごして行きたかったが、2日間の約束で靴とアイゼンを借りていて、今晩中に返さねばならなかったので先を急ぐ。タスマン氷河沿いのトラックをひたすら歩く。19:30過ぎには日も暮れたが、月が出ていて結構明るかった。20:30駐車場に着く。こんな夜中に誰もいないと思っていたのだが、運良くマウント・クック村の人が車をデポしに来ていて、ヒッチできた。もし、彼らに会わなければ、更に2時間歩かねばならないところだった。おかげでクック村に21:00前に着いた。

コースタイム : 3/29 Mount Cook village 10:00 ~ Camp site 15:45

3/30 Camp site 8:15 ~ Playing field 10:30 ~ Ball path 13:00 ~ Caroline Hut 15:00 ~ Ball Hut 18:00~ Blue Lake Car Park 20:30 ~ Mount Cook village 20:45

(記 掛川義孝)

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