日時: 2010年12月11日(土) – 12日(日)
山域: 青葉(福島県いわき市)
参加者: 国府谷・他2名
タイトルを読んで「語彙が少ないなぁ」とか言わないように。
今年も青葉は暖かかった。
今週末はS木家と青葉。背中痛めてたりで岩場は1月ぶり。
まだ痛いけど無理しないようにやります。
朝は迎えに来てもらって(贅沢)、順調に岩場まで。
相変わらずこの岩場は居心地が良い。
適当にアップしてシェイクダウン。T恵さんがイチ抜け。
ワタシはリハビリ筋トレで終了点手前まで3回ほど。(終了点落ちとか言わないの)
S木さんも宿題作ってたりして。
ちなみに今回からは、T恵さんに2000円で分けてもらった25mロープを青葉専用として使用しているので、荷物も減るし片づけも楽々であった
日曜日もぽかぽか。
ワタシは今日もシェイクダウンで筋トレ午前中に2回
S木さんはばらメール2撃。
ワタシも午後にシェイクダウンRP出来た。
足かけ3年 今週だけで6回 通算15回くらいかな。
そのあとはT恵さんとストリートダンサーでまた筋トレ。
S木さんは青葉飽きちゃったみたいで来年は二子川又金比羅
なんかも行きそう(寒くないかな)
S木家様お世話になりました。また宜しくお願いします。
(記: 国府谷)
Category Archives: 2010年山行
佐武流沢 沢登り
日程: 2010年9月18日(土) – 20日(月) 前夜発
山域: 上信越 魚野川支流
参加者: 国府谷(L)・斉藤・下島
行程:
第1日目: 湯田中(6:00) – 切明温泉(8:00) – 中津川左岸登山道 – 佐武流沢入渓点(11:40) – テンバ到着(14:30)
第2日目: テンバ出発(9:00) – 崩壊地経由 – 左岸枝沢合流地上流で引き返す(12:00) – テンバ帰着(14:20)
第3日目: 起床(4:30) – テンバ出発(6:00) – 魚野川本流着(6:55) – 登山道へ登る(8:40) – 登山道を戻り切明温泉へ(10:20) – 東京(21:00頃)
今年最後の沢登りとしてこの9月の3連休は飯豊・内の倉川七滝沢が計画されていたが、その地の天候に不安がありかねて懸案の佐武流沢に変更したのだが、更に出発直前、同行予定のN氏がぎっくり腰で不参加となっての出発であった。
18日(土)
前泊の湯田中からはKさんの通いなれた志賀高原経由で快適に雑魚川を下り切明温泉に7時に到着した。温泉宿の駐車場に車を留めさせて頂き、着替えて丁度8時に出発、車道を少し登って鉄のゲートを通ると登山道となる。右岸をしばらく行って魚野川本流に降り、釣橋を渡って左岸の登山道に取り付く。
中津川は平水で広くて浅い穏やかな渓相を見せていた。東北の沢登りが多い私にとっては上信越の森と沢は初めてで楽しみな山域だ。渡ると直ぐにつづら折れの上りが続く、10曲がりぐらいしていやになった頃中腹の平らな登山道になった。渋沢ダムへの管理道路なのだ。
朝日が森に逆光で木々を輝かせて気持のよい歩行だ。
壊れたトンネルや水場を通って、1つ下流の桧俣沢を木立の間から眺めてしばらくすると、対岸の山肌に谷模様が現れ佐武流沢の落ち込みがかすかに見えてきた。出発して3時間である。
本流を渡るのに相当降りなければならないが頼りの赤い目印テープは見当たらなかった。土砂崩れの跡のような所を意を決して降りることにする。直滑降から斜滑降、そして潅木や雑木林に掴まり下りたところは正に佐武流沢合流点の正面であった。5mくらいの滝で本流に落ち込んでいる。
本流は平水で膝までの水量を渡り11:35にいよいよ沢登りが始まる。落ち込み滝の左岸を簡単に登って滝ノ上に出るが思ったより小渓である。少しじめじめしていて薄暗い。適当に勾配があり石もあるが砂地や河原はまったく無さそうだ。苔むした石に乗ったり降りたりで遡上すると突然ブルーシートで出来たテントに出っくわした。登山道具が全く見当たらないその作りから地元の人のものと思ったが、直ぐにその先の滝つぼで釣り糸をたれている一人の老人に出会った。昨日入渓したが水量多く雨も強く予定のテンバまでいけなかったとのこと。毎年通いなれている地元の釣人である。「つれましたか?」と聞くと「まあね…」とのこと、びくの中を見せてもらったが10匹くらいはいるがまるで小型だ!しかも20cm前後の全部同じサイズ!人恋しかったのか親切な方で、テンバはどこがよいとか、ここの魚の釣り方とか、教えてくれた上にSさんは仕掛けまで頂いてお別れした。
話のとおりに極めて細い枝沢が右岸の藪から流れ込み、そのあたりのよいテンバにはまた先行者のテントがあった。焚き火のあともあり釣りびくには少し白くふやけた岩魚が沢山詰まっていた。これまた同じような小型サイズがぎっしりだ。やむなく更に上へ上へと遡上して今日のテンバを見つけることにする。程なく上から釣人二人組みが降りてきた。先行していたKさんと話をしていたが、私はその人のぶら下げていた網びくに入っている岩魚が大変気になった。これまたぎゅうぎゅう詰めの小型岩魚であり、ざっと50匹は居ただろう。乱獲である!しかも放流サイズの小型もかなり入っている。一人は通いなれているという風なやり手で、もう一人は付いてきただけのちょっと小太りした若者だった。乱獲に憤慨していた私の視線を嫌ってか声もかけずに対岸を通り抜けていった。これでは今日はもう釣りは期待できないなと思った。この3連休にあわせ前日に二組とも入渓し先んじて岩魚を釣りたいだけ釣っていくというやりようだ。やはり上信越の沢だとこうなってしまうのかといささか落胆した。あんなに釣ってしまってどうする積りだ。テンバにおいてあったのを合わせると100匹近くを持って帰って佃煮にでもする積りか!?たべてもそんなにおいしいものではないよ!きっと尾数だけを自慢するのであろう。乱獲で大型が少しも育たず場荒
れして、そのうち魚も居なくなるのが目に見えている。そう思うと無性に腹が立ってきた。ああ 東北の奥深い自然豊かな沢が恋しい。
気を取り直しテンバを探しながら登る。平らな砂地や台地などは本当に少ない。沢が小さすぎるのだ。右岸に台地状のところがありよじ登ってみると増水時に流されて出来た台地でその奥に少し平らな乾いた所があったので、そこに決めて木を2-3本切り草を刈り整地してスペースを作った。携帯のこぎりとチビ鉈が大活躍である。そこから眺めると下流に特徴的な大岩があり、対岸には栃の木の大木が目に映った。
よい森だ。植生は東北のそれとはちょっと違っていて“ブナ”も針葉樹も少なく、栃の木や桂、朴の木など大きな葉の木が多いように思えた。いずれにしても雑然と密集していてやや薄暗い。白神のぶな林が明るいのはぶなの葉が光を通すからだということを思い出した。乱獲者に遭遇して戦意喪失しその晩の食卓には岩魚汁用の2匹をやっと捕まえて夕飯となった。
19日(日)
佐武流沢を登りつめて佐武流山に至り、登山道で下流に降りる沢登り案もあったが、渓相からすると上は相当藪が深く長そうなので、沢の中で森を楽しんでそのまま下りようと言うことになり、翌朝はゆっくり起きることにした。幸いとてもよい天気になって森の中の朝日は気持よく私たちに希望を与えてくれた。
上流に崩壊地がありそこに出来たダムに岩魚がうじゃうじゃというネット情報に誘われて9時にテンバを出発した。いくつかの小さな滝や落ち込みを遡っていくと少し平らになって河原の石が皆尖っているところがあったが、その先が崩壊地だった。崩れた壁の岩が落ちて砕けて散乱していたのだ。想像したよりはるかに小規模でダムというよりはちょっとした水溜まりか瀞場といったところだが、うじゃうじゃ岩魚は数匹で瀞場の最下流で遊んでいた。それでも自然の中での生命感を感じ、森が生きている喜びにしばらく浸ることが出来る。Sさんが何とか釣ってみようと竿を取り出したのでしばらく休憩だ。山形の沢で上流に山抜けのダムが出来、入渓禁止となって久しい所があって、気になっている私にとってその構造には関心がある。30mくらい上の岩壁が崩れたようで、結構背の高い木が数本、草と泥を巻き込んで落ちてきて沢を堰きとめている。葉の緑から今年のものと思われた。ここは珍しく開けたところだが、沢はすっかり埋まっていて、水はその下を通ってにじみ出ている。ダム状の落差は全くないので近づいてその堰き止め土手を登って見ないと気がつかないほどだった。テンバからは一時間ほどがたっていた。よい天気だ。沢の様子も分かり水量も減ってきたので、この辺からは少し岩魚釣りで遊ぶことにした。
崩壊地の流れ込みで直ぐ20cmの小型が出てきた。キープかリリースか迷うが今日のおかずを考え「ゴメンね」とつぶやきながら絞めて蕗の葉に包んだ。そのあとは本当に居そうな所は何処もかしこも5-8cmの一年魚のチビばかりが針にかかった。案の定昨日の乱獲者の仕業だ。Sさんが少し大きいのを釣った。聞いてみると普通は竿を入れない対岸のくぼみだったのでますます先行者場による場荒れを承知する。私も落ち込みの裏側のえぐれた奥からやや黒っぽい中型サイズを引きずり出した。チビは沢山釣れてこの沢の魚影の濃さが分かる。初めてのKさんにも釣ってもらってご満悦写真のあとチビは放流した。
今晩のおかずにやっとの思いで6尾を確保し12時に釣りと遡上を終え日向ぼっこしながら昼飯をほおばりテンバに戻る。途中の滝の横で今回の代表的記念写真を撮ったが逆光に木々の葉が輝いてよい写真となった。
2時半にはテンバについて夕飯の準備と薪拾いを精力的に行う。一昨日の大雨で枝は湿っていて焚き火は困難を極め沢は煙に包まれていった。
今日の岩魚料理は「唐揚げに中華あんかけ」としゃれ込んだが、小型岩魚のせいか骨や皮がおいしく丸ごときれいに平らげた。9月ともなると日が短い。ピンク色の夕暮れから夜になっても沢の音は静かに変わらず、原生林の中の沢筋にいる幸せを満喫しながらほろ酔い気分で快適な眠りについた。
20日(月)
今日は朝早く出て帰る予定だ。夜中の2時ごろからテントは雨音でうるさくなった。
大雨ではないが降り続く気配であり、私は魚野川本流の増水がとても気になった。過去の雨音と増水の経験を照らし合わせて考えていた。4時半に起床Sさんのタープに感謝しながら
雨の中でかたずけをして6時にテンバを後にして沢を下る。途中の2組のテントはもはや跡形もない。沢がそんなには増水をしていないのに少し安心して、1時間で速やかに本流まで降りてきた。本流の増水も今のところほんの僅かだ。上にダムもあるので速やかに対岸に渡り一息ついた。これから登山道までは例の急な壁である。降りてきたところは雨の中では登りにくい。ブルーシートのおじさんは下流700m行って斜めに上がるといっていた。Kさんがザックを置いてルートを探しに行ってくれたのだがあまりよい踏み跡もないということで、このあたりの木が生えているところを狙って登ることにした。7-80mの壁と思うが途中で急な泥付きを回っていったりしながら、ますます急になったところでSさんの助言で私のためにKさんがロープを出してくれた。安心して泥壁を横切り岩を登って木々を潜り抜けると登山道に躍り出た。3人無事に登山道に出てロープをしまう。いつもぬれて重くなったザイルを出したり入れたりのKさんに感謝しつつ登山道を切明に向けて戻った。
平らで下りの道は楽だった。上信越の森が始めての私は近くや遠くの森を眺めて心に刻んだ。駐車場には10時20分についた。湯田中でゆっくり昼飯を頂き高速で帰路に着いたが3連休ゆえの渋滞で東京に着いたのは21時であった。
(記: 下島)
フリーまとめてアップ
「一日一本」
日時: 2010年10月16日(土) – 17日(日)
山域: 有笠山(群馬)
参加者: 国府谷・坂田・他1名
行程: 省
10月16・17日は春以来久しぶりに有笠山であった。S木さんと坂田さんの3人。
6時荻窪7時的場岩場9時過ぎ。西口駐車場はクルマ無し。もちろん岩場(サンダンス)も貸切。
サンダンスに来たら、個人的には今回の目標は、大地讃唱と若緑。
それぞれ1日で落としたい。さてどうなるやら。
アップはこのエリアで一番易しい友よさらば。かぶりきついな10aかよ、って感じ。
終了点はヤバそうだからトップロープは怖いよ、坂田さん。でもやってたけど。
大地讃唱の1回目はマスターでなくてただのヌンチャク掛けとなっている。
ガバばかりだけどレストを上手にしないともたない感じ。
2回目もいきなり2本目でテンション。イメージしてたムーブが出てこなかった。ここが核心だけどホールド浸みだしで濡れているので奧まで指を入れるとなおさらヌメる。
でもいつもそうらしいから気にしないことにした。
2回目でホールド・ムーブは固まったのであとは前半でミスしないで後半に繋げることだな。
さて3回目は下部をスムーズにこなして中間でたっぷりレスト。余裕ができてきたのか今までより
身体フリフリで保持出来てる。
後半はスピード上げて登り切った。RP。今日中に終わって良かった。
S木さんは、大地やったり若緑やったり古谷ロック行ったりで身体の調子見ながら調整。
坂田さんは友よさらばにかかりきりでした。
4時過ぎに撤収、下山(10分)。榛名湖ゆうすげ経由ボンジョルノ行っての某宅お泊まり。
翌日曜はガッツリ朝食後9時半ころに岩場着。今日もサンダンス。
セーブオンでおにぎりが80円だった。
苔の庭でアップ。珍しくかぶってないルート。
さっそく若緑ヌンチャクがけ。2本目付近のムーブは昨日S木さんに教えてもらったばかりだけどなかなかシビアだな。知らなかったら違うムーブを一所懸命探したかもしれない。
2本目付近は固まらないままとりあえず上まで。4本目あたりもちょい厳しいな。最後のガバは手が切れそうなくらい掛かりがよいけどそこまでもデッドくさい。
2回目も同じところで落ちる。とりあえず最後まで登って自分なりに固める。
S木さんにはビックプレゼントをけしかけてみたが失敗。マーヤをやるという。
見た目にもかっこいいルートだが、下からはどうやって登るのかよくわからない。
でも危なげなくマスターオンサイトしてしまった。いいなー。いつかやってみたいな。
これでワタシもRPしないわけにはいかない。帰りの車内の雰囲気が悪くなる。
でも、やっぱり最初の核心でテンション。
ここが出来ればあとはなんとかなりそうだったので、今度は上まで行かずにここで降りてもう一度やり直した。
4回目はギリギリ最初の核心をクリアし中間部の垂直?部分でレストしまくり上部に突入。
余裕は無いけど考えていたムーブ通りにつっこんで無事RP。
今日中にできたし、わずかながら自己最高グレード更新した。
甲府幕岩仕様から有笠にきてどうかと思ったけど、こっちはジムに近い動きだから適応しやすいな。
逆は難しそうだけど。
坂田さんは、苔の庭RP。ごめんこれ10cじゃなくてbだったよ。
帰りは小野上温泉行ってその先の店でジャンボハンバーグ食べた。
関越の渋滞も峠を越してたので楽だった。
(記: 国府谷)
「続けているといいこともあるかも」
日時: 2010年10月10日(日) – 11日(月)
山域: 甲府幕岩
参加者: 国府谷・他1名
行程: 省略
10月の連休は前半の天気予報が良くなかったので12日を休みにして10日から甲府幕岩としたら
これが当たった。
10日は17時に調布にS木さんに迎えに来てもらい某宅にお邪魔して焼肉パーティで前祝い。
翌11日は9時頃に駐車場に着くと車は10台ほどだった。でも岩場では人がなんとなくバラけていて混雑した感じはない。
いつもの場所(山椒王国手前)に荷物を置いていきなりブラッキーに取り付く。
アップ代わりのS木さんにヌンチャク掛けしてもらって(最初からマスターは諦めてる)、とりあえずおさらいしながら最初のトライ。
前半からバタバタで核心も繋がらない。あれ、記憶と違うなぁ、とおもってジタバタしてたら最終P前のピンチホールドを思い出してやっと解決。
S木さんがヌンチャクが掛かっていた鉄の爪をお試しした後にRPトライした。
今度は前半もスムーズにいってあっというまに核心部突入。したと思ったら夢中で最終クリップして終了点まで登りきった。
全然余裕は無かったけどま、いいか。でも次やっても出来る気がする。
昼飯食べてゆっくりしてから今度は以前に1回落ちている森で遊ぼう。
カンテをまたいでみぎひだりみぎ。パストラルと合流するあたりで傾斜が強くなって2手くらい厳しい。でも無事RP。本日2撃通算4撃であった。
さてとりあえず当面の宿題が終わったところで次はメルヘンランドでキルトやることにした。
隣のサイコモーターは以前にさんざん苦労したので更にグレードの高いキルトはこれまで避けていた。
でもやってみたら、出だしのボルダームーブは2回目で案外あっさり出来た。 ボルダーグレードでいうところの5級くらいだろうか?
色気出してそのまま頑張ってみたが最後で力尽きた。でもムーブは分かったので明日はいただきー、ということで高根の湯からガスト行って晩酌して直ぐ寝た。
さて12日。
朝は相変わらずグズグズしてしまった。
昨日より遅く駐車場に着いたら車は1台だけ。ちなみに今日から観音峠は通行止めでした。
まずはイエローマウンテンでアップ。5.9だけどなんか登り辛い。
直ぐに昨日の宿題のキルト。またS木さんにヌンチャク掛けがてら登ってもらうと、マスターでスイスイ。
ワタシはというと、またもツメが甘くホールド持ち違えてフォール。昨日触っているのになぁ。
そのあとは間違いなく登ってRP。通算3撃だからよしとしよう。
次はなにやろうかって、つぎいってみよーだな。
これもS木さんがヌンチャク掛け兼模範登攀(MOSともいう)してくれて準備万端。
でもできないのよね。でもあれこれ試してやってみてから2回目でRP。
いいのいいの、これでも。ひとと比較しないほうが良いこともある。
この時点で15時。あと1本くらいやるか、とS木さんはシリコロカムイ。
ワタシはライスシャワー。これは珍しく1撃。最後はドサクサで終了点にたどり着いた感じだけどまあヨシとしよう。
今回は宿題もないしお持ち帰りも多かった。
今年の目標のイレブン30本も見えてきたかもしれない。
(記: 国府谷)
谷川岳登攀報告
日程: 2010年9月18日(土)前夜発 – 20日(月)
山域: 谷川岳東尾根
参加者: 久世(L)・松林・廣岡
行程:
第1日目: マチガ沢BC – 第1見晴し – シンセン沢 – 左俣 – 東尾根 – トマの耳 – 厳剛新道 – マチガ沢
第2日目: 一ノ倉沢出会い – 夏道 – ヒョングリの滝下降地点(撤退)
本文は「201009tanigawa.pdf」 を参照してください。
(記: 松林)
フリーまとめてアップ
日時: 2010年10月2日(土)
山域: 天王岩(奥多摩)
参加者: 国府谷・坂田
行程: 省略
「たまには電車もいい」
最近仕事中に「ワンクッション」と言うところを「ワンテン」と言ってしまう皆さん、こんにちは。
随分ひさびさの天王岩は坂田さんと(不満はないけど)。
ちょい早めに8:20のバスで行ったら岩場には誰もいなかった。(あとから2人x2組きた)
前のマス釣り場とうまくいってないからかな。
壁は左側はヌメヌメだけど右側は大丈夫。だんだん状態もよくなってくる。
まずクラックジョイでアップ。問題ない。坂田さんもノーテンで。
次にドロボーカササギ。核心は4-5本目部分のちょっとなんだけどマスターではびびってしまいテンション。この岩場は、危険ということはないのだがけっこうプロテクションの間隔が遠いのだ。
やり直してみてもなんかつながらない。
順番待ちもないのであとでトップロープにしてリハーサルしてみるとあっさり出来てしまう。
メンタルも弱すぎだな。結局その後のトライでRP。しょうがないな、ほんと。
その後は二人で勉太郎音頭とかやって15時のバスで帰った。ひさびさに来たけどすいていればなかなかだな。ちょうどホリデー快速に乗れてラッキーだったのもあるけど。
他にもやってみたいルートもあるし。
さて、来週はどうなるやら。
(記: 国府谷)
日時: 2010年9月11日(土)
山域: 甲府幕岩
参加者: 国府谷・坂田・他1名
行程: 省略
「ブラッキー敗退」
今日は少しひとが増えたけどまだまだ空いてる。
ピリカでアップしてからブラッキーをトライ。
初めからイッパイいっぱいですぐにゲームオーバー。
1撃出来るとは思ってなかったけど、ムーブを解決できないな。
とりあえずヌンチャクを残しておく。
次のトライの間にS木さんは爆弾低気圧をRP。完璧なムーブだった。
さてワタシはグダグダやって、なんとなく繋がりそうな感じにはなったが次回に持ち越し。
坂田さんはHIVEをRP。でもこれ以前にも登ってるよね?
帰りは明野の温泉~韮崎ICデニーズ経由だった。
坂田さんはデニーズで2500円も喰ってた。
(記: 国府谷)
日時: 2010年8月28日(土)
山域: 甲府幕岩
参加者: 国府谷・坂田・他2名
行程: 省略
「夏は甲府幕岩2」
この夏二度目の甲府幕岩。
駐車場は車が2台だけ。みんなどこいったの?小川山?もう混んでてやだよ。
ブラッキーやるはずだったのだけど、なぜかスパイラルリーフ。
メルヘンランドに荷物を置いて、まずは近くで一番易しい森の唄でアップ。
ちょっと移動してスパイラルリーフへ。
このルートは最初が易しく、レストポイントがいくつかあって最後核心といった感じ。
1回目はマスターでやって終了点前で落ちた。でもムーブは解決。ガバのもち方間違えてた。
昼飯食べて昼寝してゆっくり休んで2回目に無事RP。やった、うれしい。
寝てる間にS木さんは、ジューンブライドを2撃。
T恵さんもスパイラルリーフを2撃してました。
帰り際にもシリコロカムイを1撃。終了点間際が微妙ですがめんどくさいからこれでおしまいにした。
S木さんライスシャワーもお持ち帰り。
あれ、坂田さんは?
(記: 国府谷)
日時: 2010年8月21日(土)
山域: 甲府幕岩
参加者: 国府谷・他2名
行程: 省略
「暑かった 甲府幕岩」
久々のフリーはS木家と甲府幕岩。空いていて良いかと思ったら風もなくムシムシ。
山椒王国で50への扉でアップ。
隣の30へのアプローチへ狙いを定める。
S木さんがMOSした後の1回目。何処が核心かよく分からないけど3本目上でテンション。
いろいろやるけど全然繋がらない。5手くらい連続すると手指がヌメって持たない。
たっぷり休んで2回目。ちょっと涼しくなってきたかな。
最後の数手もチョークアップできて無事RP。とりあえず成果がありほっとする。
次は、W木さんがトライ中の右隣の爆弾低気圧をトップロープでやらせてもらう。
12をトップロープできるとは思わなかった。うまいひとと来るといいことあるな。
しかし初めての12はこの状態では繋がるはずも無く、まったく可能性も感じなかった。
夜はスキヤキ宴会 ちょっと飲みすぎたかな。翌日ゆっくり朝食後帰宅。
次はブラッキーだ。
(記: 国府谷)
鳴沢岳・赤沢岳・針ノ木岳・蓮華岳縦走報告
日時: 2010年8月27日(金) – 29日(日)
山域: 後立山連峰南端 一般路縦走
参加者: 松林(単独)
行程:
第1日目: 扇沢駐車場(8:10) – 柏原林道 – 種池小屋(13:00)
第2日目: 種池小屋(6:50) – 鳴沢岳(9:40) – 赤沢岳(10:45) – スバリ岳(13:10) – 針ノ木岳(14:40) – 針ノ木小屋(15:40)
第3日目: テント場(6:00) – 蓮華岳(6:50) – テント場(7:50/8:20) – 扇沢(11:00)
縦走し残していた後立山南端を2泊3日で縦走してきました。扇沢駐車場に車を停め、柏原新道を種池小屋経由の馬蹄形ルートで蓮華岳まで。単独のテント2泊分の装備に雷雨対策で着替えやら余分な荷物を抱え込んだ為、無駄な重量を担ぎ上げてしまった。
休憩はたっぷり取り、チンタラと1人旅をきめこんだものの風も無く、下界同様の暑さだ。
初日の種池小屋・テント場も人は少なく他に3張りのみ。19時頃から雷雨になる。
28日(土)
びしょぬれのテントをたたみ、のんびり出発。久々にたっぷり寝た。
早朝は天気がよいが9時には稜線上に雲が湧いてきて時折視界が崩れる。剱岳も山頂は雲に隠れてすっきりとは見えない。標高は2600-2800nの割りに結構暑い。岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳、針ノ木岳の扇沢側から風が湧き上がる各コルは涼しくて気持ちよい。あっちで休憩、こっちで昼寝とおよそ鵬翔とは縁の無いダラダラしたペースで歩く。このコースは意外に人が少なくて静かで良い。ライチョウもかなりいる。
ところが針ノ木岳山頂は針ノ木雪渓からの登山者であふれていた。針ノ木小屋テント場も昨日とは大違いに混雑していてうるさい。扇沢から簡単に登れるためだろう。17時頃から今日も雷雨。小屋周辺に熊が出るそうで、夜間の外トイレは使用禁止だった。
29日(日)
空身で蓮華岳をピストンする。なんと体の軽いことか。荷物を背負わないことの幸せを満喫する。蓮華岳も登山者が多い。天気も良く、槍、富士、浅間、妙高、と全方位の眺望を満喫できた。
テン場に戻り、テント撤収後、扇沢へ下山。大町温泉薬師の湯で汗を流し帰京。
(記: 松林)
魚野川本流遡行
日程: 2010年7月17(土) – 19日(月)
山域: 魚野川本流(上信越)
参加者: 国府谷(L)・土井・斉藤・中村
行程:
前夜: 新宿駅西口集合(21:30) – 野反湖(駐車場にて泊)
第1日目: 切明温泉方面への登山道を行く(6:30) – 11: 10 渋沢ダム着魚野川へ入渓(11:30) – 高沢手前(15:30)
第2日目: 高沢手前(8:00) – 黒沢出合(11:40/12:10) – 奥ゼン沢出合(15:50)
第3日目: 奥ゼン沢出合(6:00) 6: 40 小ゼン沢出合(6:40) – 五三郎小屋経由 – 高山・三壁山経由 – 野反湖駐車場着(16:00)
今回は、直前まで梅雨末期の集中豪雨が長野県地方を襲っていたので、一日短縮して奥秩父の沢に変更することも検討したが、最終的に予定通りの魚野川遡行を決行することとなった。
7月17日
雲が多かったが一応晴れており、一安心して駐車場を出発。渋沢ダム手前のつり橋を渡る直前にある小屋跡あたりで登山道を離れ、左の方向に行くと魚野川へ降りる踏み跡がかすかにある。本流は心配した通り水量が多く、最初の徒渉で一人での徒渉は危険であることわかり、それ以後は二人または四人でスクラムを組んで何とか徒渉できた。この日はこのような厳しい徒渉を何度も強いられ、私としてはこの山行での核心部であったと思っている。千沢を分けた後は廊下が続き、へつり、徒渉、高巻きを繰り返して越えた。通過不能と思われるところには高巻き跡があったので助かった。14:30頃にテント泊の跡がある適地が見つかったが、まだ廊下を完全に越えておらず、予報通り夕方雷雨があって増水した場合、戻るのも進むのも難しくなる可能性もあり、さらに進むことにした。
15: 00頃には雷音がし始めたため、50cmほど高くなっている砂地のテント跡で泊まることとした。増水の心配があるため、数m離れたところにある高台(4-5人はすわれそう)を確認してテント設営した。1時間もしないうちに雷雨が始まり3時間ほど続いたが、相当の雨量だったため増水が早く、清流も濁流に変わり水がテントにせまってきたので、
安全のためテントをそのまま高台に運んで避難した。幸い、テントは斜めになりながらも四人が足を伸ばして寝られるくらいだったので、作り終わっていた夕食を終えそのままそこで寝ることにした。水量はテントのあった所付近まで来たが、それから引いていった。
7月18日
明るくなってから水量を確認したが、まだ昨日の雷雨前より10cmほど高く、8時まで待って出発した。高沢をすぐ分け、沢もゴーロが多くなり、快晴の太陽を浴びて前日の緊張も薄れ黒沢を越す。大きな支沢を分けたため水量も一人で徒渉できるくらいまでになる。8mの魚止めゼンは、左端を簡単に登って越えると記録にはあるが、滝の幅いっぱいに水がザンザと流れ落ち、水量が多くまともには登れない。とはいってもこれを巻くには左岸を70-80mほど戻って大きくこえるしかなさそうだったので、国府谷さんが左の水線通しに登ることをトライ。増水した水流がほとばしる左端の正規の(?)ルートのさらに左側(ツルツルにみえる)を微妙なバランスで登っていき、上部3mほどをシャワークライム。残る三人も、国府谷さんの支えるザイルたよりに何とか越えることができた。さらに続く8m、5mの同じような滝は高巻いてこえ、きれいな断続的なナメを越えて奥ゼン沢出合いに到着。すでに2-3パーテイが左岸の二箇所にテントを張っていたが、我々は右岸に立派なテント場をみつけた。斉藤さんが夕食のイワナを釣りに行っている間に、楽しみな焚き火を起こそうとしたが、このところ続いている雨で湿っているためかなかなか大きな薪に着火せず、1時間ほどがんばったが徒労に終わった。それでも小さいながらも焚き火は気持ちを安らかにしてくれる。近くで張ったタープでゆっくり夕食を楽しんだ。(ヒトが多いせいか、斉藤さんも成果なし)。
7月19日
本日も行動時間が長いと予想されるので、4時前起床、6時出発。快晴のため心も浮き浮き。私(中村)は、目のあたりを悪い虫にさされて腫れて左目が少々見にくくなったので、土井さんにリードをお願いしたが、何となく歩きにくくバランスをくずしやすく、両目がちゃんと見えることの重要さを痛感した。朝の冷たい水に浸かりながらも40分ほどで小ゼン沢出合の8mほどの滝に到着。設置してあったトラロープに頼りながら右側を高巻いたが、少々悪く、釣り師はこの小ゼン沢を下降して魚野川に出るのが人気ルートと聞いていたが、首をかしげた。しかし、滝上にでて10mほどの左岸に明瞭な踏跡があり、たどってみると20mほど行くと魚野川本流に出られて、納得。快晴の中、どんどん高度をあげ、はじめの二股で左に入り、2-3の滝を高巻いて、最後には藪こぎなしで五三郎小屋にひょっこり出た。
それから登山道を大高山、三壁山と越えて野反湖に戻ったが、4時間ほどの上り下りに最後はバテバテだった。
魚野川本流は、記録を読むと、通常はそれほど緊張を強いられる難しい沢ではないようだが、水量が多かったために1ランク手ごわくなり、時間もかかった。それだけ充実した山行となった、というのが正直な感想である。今回は当初計画通り小ゼン沢から本流を離れたが、今度は小ゼン沢から源頭までトレースしてみたい。その場合、志賀高原から入り、庄九郎沢または奥ゼン沢を下降するのがよさそうである。
(記: 中村)
北岳バットレス山行報告
日時: 2010年6月25日(金) – 26日(土)
山域: 北岳バットレスピラミッドフェース – 第四尾根(南アルプス)
参加者: 国府谷(L)・松林
行程:
前夜: 調布駅(22:00) – 芦安駐車場(車中泊)(1:00)
第1日目: 駐車場(5:00) – (乗合タクシー) – 広河原(5:50/6:15) – バットレス下部岩壁Dガリー(11:30) – ピラミッドフェース – 第四尾根 – 枯木テラス上部
第2日目: 枯木テラス上部(4:50) – 北岳山頂(5:50) – 八本歯コル – 二股 – 御池小屋(10:30) – 広河原(11:50) – (乗合タクシー) – 芦安駐車場
芦安駐車場からの乗合タクシーは1200円。ラジオでワールドカップデンマーク戦の中継(3 – 1で勝利)に興奮し、睡眠不足が解消できないままに広河原へ到着。
広河原からは大樺沢ルートをとった。このルート、冬季に大規模な雪崩があったらしく、夏道は崩壊・埋没し根元でへし折れた木々が谷をふさいでいる。沢は折から増水。先行組が断念して下山してきた。雪渓に出るまでバリエーションのようだったが国府谷リーダーの「うん?どうってことない!」の一言で突き進む。二股手前からの雪渓は雪がクサりまたまた体力を消耗したものの、国府谷Lはすたすたと突き進む。牛歩の私との間隔は開くばかり。予定をかなりオーバーしてバットレス下部岩壁のDガリー取り付きにやっと着いたのが11:30。ここでも問題発生。下部岩壁と雪渓の間には1m幅の深いシュルンドが口を開けている。先端は今にも崩れそうだ。さすが国府谷LはDガリー左側からに忍者のように渡る。あの人の前では雪も崩れないから不思議だ。
壁には我われだけ。誰もいない!金曜日のせいか?今年は山も荒れているし雪が多くて人が入っていないんじゃない? 国府谷Lとはちがってこちらは不安が増してくる。
ピラミッドフェース1p目、浅い凹角を40m、2p目の草付バンド。残雪があるじゃん!右側からまいて40m、3p目スラブ25m、4p30m目くらいから残置支点がめっきり少なくなった。てごろな支点はどれもカタカタゆるんでいる。このルート最近誰も登ってないんじゃない?
バテバテの上に荷物がやたら重い!脚が挙がらない。出発前の華麗に岩壁を登るイメージはどこえやら。やたらヌンチャク、フレンズをつかみまくり、残置支点にシュリンゲを掛けてアブミの代用で立ち上る。もう面子もへったくれもない。とにかく体を持ち揚げなければ。上がるのは息ばかり、口の中はカラカラだ。カニの縦バイならぬ亀の縦バイだ。8p目、クラック先のハイマツを抜けると第四尾根にひょいと出た。ピラミッドの最後の核心は避けたルートになったが、ザックの加重で体が限界に近いところまで消耗してしまっていた。国府谷Lの冷ややかな視線の中、勝手に長い休憩のあと第四尾根はつるべでマッチ箱の頭まで。懸垂でテラスに降りた頃にはすでに19時をまわっていた。周囲の景色がモノトーンに変わり出し、足元の明るい間に北岳山荘に着くことは到底無理。枯木のテラス先の終了点とおぼしきテラスでビバークすることにした。すぐ近くに残雪もある。幅1m、ハイマツでビレイをとる。横並びに谷に脚を投げ出してテントの口を開け、袋状にかぶる。岩を背にすわった状態だ。横にはなれないがなかなか快適だ。国府谷Lには悪いがバットレスでのビバーク願望のあった私は大満足。晩飯はα米の五目飯と卵スープ・ソーセージ・コーヒーで場所に似合わず豪華な食事だった。かぶったテントの隙間から見える甲府の街明かりはきれいに瞬いている。これなんだよ!私のやりたかった岩壁のビバークは!満げな国府谷さんの横で私だけ大満足であった。
風も強くなり夜半になってパラパラと雨がたたき出すと急に冷え込んでくる。座ったままで体を丸くできないから脚から震えがくる。3時半頃に寒さで我慢できずガスカードリッジで暖を取りそのまま早い朝食をとる。辺りから鳥の鳴き声がする頃には雨は上がり撤収4:50出発。眺望は良いが上空は雲。今日は八つも富士も見えない。時折小雨が当たる程度で寒くは無い。
ところがここから山頂まで時間がかかった。雨で岩面が濡れている上、ルート上に残雪が多い。迂回路は雪解け後でゆるんでおり足場が悪く滑る。ロープを出していないのですべったらアウト。昨日以上に緊張の連続。多分、ここが今回の一番の核心だったように感じた。
稜線に出たところでガッチリと国府谷さんに感謝感謝の握手をした。
北岳山頂からは八本歯のコル、二股、白根御池小屋を経由して広河原に降りた。最後は数組のパーティーに追い越されひざと腰にもケタケタ笑い出されるほどバテバテになり、強まった雨と汗でずぶぬれになってなさけなく下山した。10:30。
広河原ターミナルではこの日、山開きのイベントの真っ最中。なんと暖かい天ぷらそば・桃がタダ。とたんに顔がゆるみ、目が輝いた。満足の後は爆睡の乗合タクシーで芦安駐車場に着いた。
体はガタガタ。声も出したくないほど疲れたが大満足の経験だった。マイペースの私に最後まで付き合ってくれた国府谷Lには心底申し訳なかったが。
(記: 松林)
鶏冠谷右俣
日程: 2010年6月20(日)
山域: 鶏冠谷右俣(奥秩父)
参加者: 中村・土井
行程: 西沢渓谷駐車場(8:05) – 東沢下降 – 鶏冠谷出合(8:45) – 魚止ノ滝 – 奥飯盛沢出合 – 3段12m滝 – 20m逆くの字滝 – 二俣(11:30) – 25m大高巻ゴルジュ下降 – 30m滝 – ナメ連続 – 40m滝手前で遡行終了(15:00) – 戸渡尾根(近丸新道)登山道(15:40) – ヌク沢渡渉 – 西沢渓谷道 – 駐車場(17:40)
焼き鳥、水炊き、ローストチキン…。無類の鶏肉好きにもかかわらず、「鶏」という名のつく地名にはトンと縁がない。近畿には鶏冠井町(かいでちょう)とか闘鶏山(つげやま)といった難字の地名もあるが、どうも関東には少ないようだ。今回は、中村さんに誘われて、笛吹川鶏冠谷右俣で「鶏」の初体験をしてきた。特選激賞という触れ込み通りだったが、一週間降り続けた雨のせいで手強い遡行となった。
ガスの切れはじめた西沢渓谷駐車場に着いたのは7時35分。娘が3歳の時に訪れて以来なので、実に12年ぶりの再訪だ。沢支度をして出発したが、記憶をたどるように渓谷道を歩く。
ナレイ沢、ヌク沢を越え、すぐに東沢分岐。吊り橋から見下ろす東沢は水量が多く、ゴーゴーとうめている。鶏冠谷出合の河原には、立派な標識の打たれた巨木が一本。その巨木も水没し、中村さん曰く「膝まで濡れて渡渉するような場所ではないのにね」。
開けて明るい東沢に比べ、鶏冠谷入渓点は鬱蒼として暗い。まるで、森の井戸の底に引き込まれるような錯覚がし、この先に美しいナメ滝があるとは思えない。それでも、一週間前の丹波川本流と比べると澄んだ水は美しく、ついニンマリとしてしまう。小滝をサクサクと越えると10m魚止め滝。左岸を登れるらしいが、落ち口から激しく水を飛ばす壁に取り付く気にもならない。
森は鮮やかな緑を惜しみなく魅せてくれ、単調になりがちなゴーロ歩きも快適だ。平水時は何ともない4m滝も、水量が多いとスタンスとホールドが全く見えない。これに尻尾を巻いては何のための沢登りか分からない。腰まで淵に入り、泡立つ水流に手足を突っ込む。でも、ヘルメットをガンガン叩く水に恐れをなして一回退却。ニヤニヤと見守る中村さんの姿に闘志に火がつき再び突入!鶏冠谷の水は容赦ないが、チキンハートを奮い立たせて立ち込む。すると、あっけなくホールドも見つかった。
奥飯盛沢の出合で一本。登れば絶悪5級の登攀となるF1がそそり立っているが、こんな滝を遡行するパーティーがあるのだろうか。
3段12m滝は、2段目を左岸から小さく巻き。そして、すぐに20m逆くの字滝だ。過去の記録によると、ここはキャーキャーワイワイ楽しみながら登れる鶏冠谷のハイライトらしい。ところが、金曜日まで5日間降り続けた雨のせいで、水量が半端じゃない。気を抜くと激流に押し戻されそう。ザイルを出して突破したが、これぞ沢の醍醐味だろう。
二俣からは右俣を進む。25m滝は登れないので支尾根を大高巻き。ルート図より進んでしまったらしく、懸垂下降2発でゴルジュに降り立った。ここで気づいたのは、谷が荒れていること。倒木があちらこちらに突き刺さり、景観を台無しにすること甚だしい。倒木・落石・斜面崩壊はナメ滝まで続き、これさえなかったら右俣は美渓なのかもしれない。
鶏冠谷右俣で最も手こずったのは、このゴルジュ出口の30m滝だった。「左岸の倒木沿いに登り、中段のナメ状の滝を右岸に渡る」とルート図に記してある。中段まで登ってみたものの、水流の多いツルツルの滝を確保なしに対岸へトラバースするのは無謀というもの。では、草付きを上がるのかというと、所々に生えているミズの葉は簡単に剥がれしまうし、その上部は外傾しているように見えた。仕方なく右側の泥付きルンゼに挑んだが、これも相当悪く進退窮まりそう。下から「もう、それ以上登らないでくれ」と指示され、やむをえず退却した。
ゴルジュの底まで戻り作戦を練り直す。「さて、高巻くと言っても、いったいどこを?」と見回す。「ゴルジュ右岸の泥付きの壁しかないね。僕が行くよ」と、中村さんが果敢にアタックする。確保したくても、支点となるような木も岩もない。ハラハラ見守るなか、ジリジリとバランスで登っていく。踏み跡があるらしく10mほど登り、ザイルを出してくれたことに感謝。ここからはツルベで確保しながら高巻いたが、このゴルジュ脱出に1時間……。トホホであった。
帰宅して気づいたのだが、この30m滝を大半のパーティーは右岸バンドから簡単に越えていた。水量の多さで見落としたのか、或いはルートミスだったのかは定かではない。いずれにせよ、増水すると難易度が数段アップすることだけは痛感した。
この後は、倒木で荒れ気味のナメを遡行し、午後3時過ぎに40m滝。ここで、沢から離れ、左岸から近丸新道を目指す。かすかにあった踏み跡は獣道となり、最後は石楠花の枝と戦うヤブこぎ。15時40分に登山道に出たときは、沢用パンツには特大の穴が出来ていた。
(記: 土井)
剱岳八ツ峰主稜縦走
日程: 2010年5月1日(土) – 3日(月)前夜発
山域: 剱岳(北アルプス)
参加者: 久世(L)・廣岡
行程: 第1日目: 扇沢 – 室堂 – 剣御前小屋(別山乗越) – 三田平(幕営)
第2日目: 三田平 – 長次郎谷出合 – 八ツ峰主稜縦走(1・2峰のコル – 八ツ峰の頭 – 池ノ谷乗越) – 長次郎谷出合 – 三田平
第3日目: 三田平 – 剣御前小屋(別山乗越) – 室堂 – 扇沢
4月30日夜22時に都内出発。ゴールデンウィークの中日といっても中央道は茅野あたりまで断続的な渋滞で、雪の降る扇沢に着いたのは翌朝5月1日4時過ぎだった。駐車場が満杯でスペースを探すのに苦労した。1時間ほど仮眠。6時30分の朝一番のトロリーバスに乗るつもりがチケット売り場はすでに長蛇の列で、結局7時発の便になってしまった。
室堂を9時20分出発。見上げる空は雲ひとつなくどこまでも青い。真っ白な雪の立山が美しい。空気も冷たくて気持ちがいい。しかし、雷鳥平に着く頃には汗ばんで、シャツ一枚になった。時間は9時50分。
ここから別山乗越までの長く単調な登りが続く。荷物が重くスピードが上がらない。久世さんのペースについていくのがやっとだ。剣御前小屋に着く頃から風が強くなった。ここからテント場の三田平までは退屈な下りだ。まだ雪が深くて歩き辛かった。
13時30分、三田平に着いた。すぐに雪のブロック塀作りに入る。テントを強風から守るためだ。硬い雪面にスコップを突き立てて掘り起こし、50センチ大の雪ブロックを作る。それを、テントスペースを囲むように、大体4メートル四方、1メートル半ぐらいの高さになるまで黙々と一段ずつ積んでいく。忍耐のいる作業だった。初日からヘトヘトだ。テントを張り、中でくつろぐ頃には暗くなりかけていた。
夜は久世さん特製の肉と野菜いっぱいの鍋料理だった。(材料を仕込んでくれた久世さんの奥様に感謝しつつ)とりあえず乾杯。たらふく食べて19時にはシュラフにもぐりこんだ。夜中、雪も降り出し、風がテントを打つバタバタという音で何度か目が覚めた。外は相当強く吹いているようだ。雪のブロックがなかったら大変なことになっていたかもしれない。
5月2日は予報通りの快晴だった。4時45分出発。剣沢を下る。テント場からのトレースはなく私達が一番手のようだ。時々、前日に降った雪が深くて足を取られる。5時25分に長次郎谷出合到着。出合にはテントが数張あり、また、下の真砂沢小屋からも数パーティが上がってくる。先行に2パーティと、後ろからも何パーティかは八ツ峰に向かうようだ。ここから長次郎谷を登り返して八ツ峰の取り付きを目指す。ザックの中はロープ、防寒着、行動食と水ぐらいなのに足が重い。長次郎谷は想像以上に長くて傾斜があった。途中から右にトラバースするように1・2峰ルンゼの急斜面に取り付き、しばらく登ると大きくせり出した岩の下に着く。ここは安定しているので一息つける。1・2峰のコルへはさらに急な雪壁を詰めていく。振り返ると登ってきた斜面の意外なきつさに驚く。前方を見ると久世さんはもうずっと先だ。そのスピードに全然ついていけない。恐るべき体力だ。ガシガシという感じで登っていく。
8時にようやく1峰と2峰のコルに着いた。いよいよ八ツ峰縦走のスタートだ。久世さんの「ここからが本番ですよ。」の言葉に気合を入れなおす。
2峰の懸垂ポイントまでは左方向、長次郎谷側に15メートルほどの急斜面をクライムダウン(後ろ向きに降りる)で斜め下にトラバース。ダブルアックス(この時はピッケルとアイスバイル)で確実なポジションを取り、アイゼンの前爪を利かせ、切り立った雪壁から体だけ飛び出すような格好で降りていく。足元から下は何もない。ずっと下に長次郎谷が見える。いきなりこんなところを・・・ホント勘弁して欲しいなあと思いながら慎重に歩を進める。表面はクラストしているが、雪が腐っている箇所もあって油断すると足元からズルッといってしまう。つま先をしっかりと蹴り込まないといけない。前方の久世さんから「ゆっくりでいいから慎重に!」の声が何度も飛ぶ。雪壁が切れたところが懸垂ポイントだ。雪面から張り出したハイマツの枝にロープを掛けて、長次郎谷側に25メートルを懸垂で降りる。
3峰へは細いスノウリッジを進む。そして懸垂で20メートル、4峰への稜線に降りる。さらに、痩せた稜線を進み4峰からまた懸垂下降だ。ここは三ノ窓谷側に約25メートル。支点は青いスリングが一本雪面から出ているだけだった。スリングの下がどうなっているかわからず信頼できないので、支点にできるだけ体重をかけないようにしてゆっくり降りる。もし抜けたらと思うと生きた心地がしない。さらに、降下ポイントが急斜面なので、体の位置をコントロールしながら降りないと谷のほうにどんどん落ちてしまう。稜線ルートに戻るように登り返しながらロープを手繰っていく。通常のシンプルな懸垂下降と違ってけっこう体力を使う。
4峰から5峰はアップダウンを繰り返しながら左右に切れたスノウリッジが続く。三ノ窓谷側の雪庇を踏み抜かないように、出来るだけ長次郎谷側寄りに進む。
5峰は天を衝くようなピナクル(尖塔)状の赤茶けた巨大な岩だ。その中腹あたりに懸垂支点がある。ここに辿り着く手前のナイフエッジは本当に緊張した。その距離はわずか5メートルほどだが、エッジの両側はドーンと深く切れ落ちていて、幅はわずか25センチぐらいしかない。ちょっとバランスを崩したら三ノ窓谷か長次郎谷にまっすぐ落ちて、間違いなくあの世行きだ。久世さんが「慎重に!慎重に!」と繰り返し大声で指示する。一歩、また一歩と左右の足を交互にそろりそろりと前に出していく。恐ろしいほどの高度感に神経を張り詰めながら、辿りついたときには強度の緊張で喉がカラカラになっていた。
ここから5・6のコルには長次郎谷側に約40メートルずつ、2回の懸垂で降りる。途中にはブッシュや岩のクラックがあって、ロープが引っかからないように降りる。2回目の懸垂の着地点から5・6のコルまでは安定した斜面を40メートルほど歩く。このコルは広くて眺めも良い。縦走中、唯一ホッとできるところだ、時間は10時50分。休憩の後、遅れ気味なので先を急ぐ。
6峰は大きい。八ツ峰登攀のハイライトの一つだ。急傾斜の雪壁と長い登りが続く。登り始めの壁が一番きつい。概ね30メートル。感覚としてはほぼ垂直に近い。ピッケルとアイスバイルをしっかりと打ち込んで登る。しかし気温の上昇で雪の状態が悪くなっている。時々足元の雪が崩れる。蹴り込んだアイゼンを確実に決めてひたすら高度を上げていく。
最初の壁を越えたところで右に10メートルほどトラバース、突き当たった小さな岩を抱くようにして2メートルぐらいの段差を三ノ窓谷側に降りる。そこから先は延々と続く急なスノウリッジの登りだ。時折、胸を突く急登に息が荒くなる。何箇所か急雪壁を乗越すような部分があった。そういうところはピッケルを深く刺して、体重を前のめりにして思い切って乗り越えて行く。とにかく一歩一歩体を上げていくしかない。久世さんを必死で追うが相変わらず凄いスピードだ。しかし、私を気遣って時々ペースを落としてくれる。
6峰の中間点の緩やかな傾斜地で小休憩を取る。時間は11時40分。登ってきたルートを振り返ると、そこにはダイナミックなパノラマが広がっていた。感動する。
ああ、この雄大さが剱なんだなあと思う。辛く厳しい登りを繰り返した後には、こういう神様からの褒美が待っている。
6峰のピークに着いたのが12時10分。ここから三ノ窓谷側への約20メートルの下降は、クライムダウンが一般的のようだ。支点はない。最初は久世さんにスタンディングアックスでビレイしてもらって数メートル降りた。しかし、途中でまごまごしていたら、上から久世さんが「嫌な感じがするなら懸垂にしますよ。」と言ってくれたのでつい甘えて、登り返し、懸垂に変更してもらった。久世さんが雪庇を利用してスノウボラード(Snow Bollard: 雪の平べったい柱状のもの)を作りその外縁にロープを回す。これを支点にして降りる。私はスノウボラードでの懸垂下降は初めての経験で、本当にこれで利くのかとちょっと心配になる。久世さんの指示に従って体重を静かにかけながら降りた。
6峰から7峰は細いナイフリッジを辿っていく。長次郎谷側は岩がむき出しになった垂直の壁、三ノ窓谷側ははるか下の谷底まで何もない急斜面だ。その表面は、純白のシーツを敷き詰めたように滑らかだ。少しでも滑ったら絶対に止まらないだろう。ここから谷底までの高度差は800メートルぐらいか。息を深くして一歩ずつ足を置くように登っていく。見下ろすと体ごと吸い込まれそうで目がくらむ。
それにしても素晴らしい高度感だ。いいようのない高揚感が体の中から沸き起こってくる。危険な場所にいるのにあまり恐怖を感じなくなっている。不思議な感覚だ。
7峰のピークからの眺めは素晴らしい。これから行く8峰への美しく切り立った白い稜線が続き、その先に八ツ峰の頭(かしら)が見える。その右手前にはクレオパトラニードル、奥にはいつか登ってみたいと思うチンネの雄姿がある。そして、左に目を転じると堂々たる剱岳本峰が聳えている。まさに威容である。剱岳のピークから左下に真っ直ぐ荒々しく落ちていくのが源次郎尾根だ。
すべてが美しい。自分がこんな世界にいることの幸せをかみしめる。時間と空間が融合した時空の世界、その異次元の世界との境目にいるようだ。空を限りなく体の近くに感じる。これがアルパインクライミングの醍醐味であり魅力なのだ、と思う。
さて、7峰のピークの下降も懸垂になる。三ノ窓谷側に約30メートル。ここも危険な箇所だった。ピークから懸垂ポイントまで、岩に薄く張り付いた氷の表面をクライムダウンしないといけない。わずか3メートルぐらいの距離だが、その先はまっすぐ落ちている。ノービレイでは正直いって恐い。久世さんが先行してそこから確保してくれた。この支点はしっかりしていたので安心して降りることができる。しかし、やはり着地点が不安定で少々難儀した。
8峰はピークまで約50メートルの雪壁を一気に登る。壁の半ばあたりから傾斜がせりあがるようにきつくなる。60度以上はあるだろうか。万が一のことを考えて、ここで初めて久世さんにロープを出してもらった。久世さんがトップで行く。ピークの向こうに姿が消え、しばらくしてから「上がっていいよー!」のコール。私も続く。雪壁はかなりの急傾斜で両側は切り立っているが、登ってみるとピーク手前のクラストした数メートルを除けば、下から見たほどの難しさは感じない。
しかし、8峰からの下りは極めて細いナイフエッジだ。雪稜の先端が刀先のように鋭くなっている。8峰のピークから久世さんにビレイしてもらい、私が先行する。歩いてみると思ったより雪がもろい。進むにはかなりの緊張を強いられる。それを久世さんに伝えると、エッジの中間点まで行って、スノーバーでランニングを取るようにとの指示が出る。ハーネスにぶら下げていたスノーバーをはずして、エッジ雪面の深くまで刺し込む。そしてセットしたヌンチャクにロープを通す。これで少しは安心だ。さらに気持ちを集中して前進する。
胸越しに手を伸ばし、ピッケルのスピッツェ(柄の先端)をナイフエッジの向こう側(三ノ窓谷側)に刺して、体を手前(長次郎谷側)に置く。ナイフエッジの先端が脇の下にくるような立ち位置だ。前に差し出す足もとの雪が崩れないか確かめながら、足裏に静かに体重をかけていく。そして確実にスタンスを取りながら、蟹歩きのようにじわじわと移動する。
これほどのスリルを感じるルートは初めてだ。慎重に辿り、10メートル先の安定した小さなコルまで行く。ピッケルを刺して支点を作り久世さんを待つ。この頃から急にガスが出てきた。風も強くなった。天気が崩れるのだろうか。時間はもう15時。しかし、ここまでくればあと少しだ。
さて、いよいよ最後のピークの八ツ峰の頭(かしら)に向かう。ここもやはり急登だがこれまでのルートに比べればずっと易しい。トップの久世さんが難なくサクサクと登っていく。私も後に続く。最後のピークを目前にして解放された気持ちで登る。
ところが強い風に吹かれてロープがたわみ、途中の岩に引っかかってしまった。いったん下ってロープを手であおり何度もはずそうとしてみたがダメだ。仕方がないのでハーネスからロープを解いてフリーで上がる。八ツ峰の頭に着いたのは15時30分だった。晴れていれば富山湾が一望できると期待していたのに、ピーク全体がすっぽりとガスに覆われてしまって何も見えない。残念だ。
八ツ峰主稜の縦走は、池ノ谷乗越への下降でようやく終わる。事前の調べでは懸垂で降りる、とあったのだが、ピークに支点らしきものはなかった。久世さんにスタンディングアックスの体勢で確保してもらう。ここは出だしが良くない。ところどころ岩が露出していて表面の雪が薄く不安定だ。しかも下降ルートの幅90センチの両側は垂直の壁だ。クライムダウンを続けながら途中の岩場に支点を探すが見当たらない。仕方なくそのまま慎重にゆっくり降りた。
私たちが池ノ谷乗越に着いた時にはすでに16時を回っていた。この時、天気はすっかり回復して空はきれいに晴れていた。北西には、3年前の同時期に辿った小窓尾根の迫力のある大きな岩稜群が間近に見えた。あの時久世さんは剱尾根を単独で登り、あらかじめ行程を合わせてこの池ノ谷乗越で落ち合い、幕営した。その翌朝、共に剱岳本峰のピークを踏み、久世さんは別山尾根、私は早月尾根を下りそれぞれ東京に帰った。懐かしい思い出だ。
早朝からのタフで厳しい縦走登攀を無事に終えて、久世さんとがっちり握手した。八ツ峰をやったという達成感、なんとも言えない充実感である。
こんなときこそ、生きていることを実感する。
帰りのルートは剱岳本峰を経由しての下山という選択もあったが、時間と天候急変の可能性を考慮して長次郎谷を下ることにした。大休止の後、長次郎谷を一気に下りる。
左に、今朝登ってきた八ツ峰の白く優美な稜線の連なりを見上げる。その姿は、はるか下方の谷筋から、真っ直ぐに、激しく上下にうねるように伸びて、そのまま天空に駆け上がっていく巨大な白い龍のようだ。
その背中ともいえる稜線をなぞるように点々と続くトレースが見える。あれをずっと登ってきたのだ。またひとつ山への気持ちが強くなった。
気づいたら、久世さんの姿ははるか彼方の下にある。猛然と走り下り、出合い近くでようやく追いついた。
長次郎谷の出合までの私はまだ元気だった。しかし剣沢の登り返しでへばった。この登りは本当にきつかった。出合いからテント場まで2時間程度の行程だが、だらだらとした登りが果てしなく続く。途中から久世さんに先に行ってもらう。いくら歩いても景色が変わらないように思える。ずっと前方で足の遅い私を久世さんが時々待ってくれるが、なかなか追いつけない。本当に信じられないほどのタフさだ。それでも遠くから私の動きを見ていてくれる。情けないことに、テント場に続く最後の登りではもう足を上げるのがやっとだった。
テントに着いたのが19時20分。なんとか暗くなる前に到着した。テントの中では、私の安全を確認してから先行した久世さんがお湯を沸かして暖かいコーヒーを入れてくれていた。実にうまい。疲れた体に熱いものが染みとおっていく。そして、無事の登攀を祝って乾杯した。
当初、翌5月3日は源次郎尾根を登り、その日の夜に東京に帰る計画だったが、私の体力と全体の行動時間を考えて登攀は中止した。
5月3日、5時起床。テントを撤収、7時に出発した。時折、名残惜しく、剱岳とその向こうに重なって見える源次郎尾根と八ツ峰の稜線を振り返る。剣御前小屋を8時に通過、室堂に着いたのは9時30分頃だった。あたりはすでに大勢の観光客で賑わっていた。帰りは乗り継ぎの待ち時間もほとんどなく、11時30分には扇沢に着いた。大町温泉で汗を流し、東京帰着は18時だった。
今回の山行は、私の実力で行けるのか不安があった。登る前、久世さんが「八ツ峰は一瞬のミスも許されないルートです。」と言った。実際、私はそれを随所で思い知った。私の力不足で行動時間は約15時間弱。体力を消耗したが、精神的にも技術的にも得るものは大きかった。そして今回も山からたくさんのことを教えられた。やはり山は素晴らしい。
久世リーダーに心から感謝したい。
(記: 廣岡)